公認会計士短答式試験のボーダーを考える|2005年から2023年データまでを徹底分析

合格率推移分析
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誰もが気になる会計士短答式試験の「ボーダー」

先日、「令和5年第Ⅱ回目の公認会計士短答式試験」が実施されました。その後、早々に各専門学校から今回の短答式試験ボーダー予想含む、総評が公開されていますね。結果発表まで落ち着かない受験生も多いかと思います。特に「ボーダー近辺かも」という方は、論文式試験へ向け準備したいけど、そうもいかず・・・という方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は「公認会計士短答式試験」のボーダー推移を中心に参考情報をご紹介したいと思います。

✓ 短答式試験のボーダー実績推移
✓ 過去実績から見る「ボーダーが最も高い点or低い点」
✓ 第Ⅰ回と第Ⅱ回での合格率比較「やはり第Ⅰ回目を狙うべき」
✓ 専門学校のボーダー予想「財務易化はボーダー上がる?」

あくまで過去実績中心の情報なので参考となりますが、これから短答、又は論文式試験へ向けての勉強方針を決める上で、是非、ご覧ください。

会計士短答式試験の「ボーダー」とは?

まずは「短答式試験のボーダー」についてです。

引用元:公認会計士・監査審査会HP 令和4年

上記は公認会計士・監査審査会HPの「令和4年公認会計士試験受験願書及び受験案内等の配付について(第Ⅰ回短答式試験用)」からの抜粋となります。記載のとおりボーダーは「総点数の70%」となります。

注意.総点数の70%は総問題数の70%ではない

「総点数の70%」と聞くと、マークした解答の7割正解すればいいと考えそうですが、そうではありません。それは「配点」が異なるためです。基本、監査論と企業法は各5点で配点は均一ですが、財務会計論と管理会計論は異なります。

そのため、単純に「7割マークが合っていれば合格」ということではありません。自己採点ではしっかり考慮しましょう。

注意.「総点数の70%」はあくまで「基準」

もう一つの注意点です。それは、合格ラインが「70%」を基準として、「ブレる」ということです。配点をふまえ、総点数の70%を確保したと思っていても、ボーダーが「73%」というケースもあります(逆も然り)

そのため、ボーダー近辺かも?という受験生は、さらに合否の推測が困難になるわけです。

実際の会計士短答式試験ボーダー推移を分析

いろいろ専門学校のボーダー予想等もありますが、まずは「事実」から抑えましょう。2005年(旧試験)から2022年(令和4年)分までの計30回分の合格ボーダー推移を見ていきます。

なお、2010年までは短答式試験は年一回のみ、2021年はコロナ影響で年一回のみの実施です。

引用元:公認会計士・監査審査会HPの各年合格発表データから集計

いかがでしょうか。「総点数の70%」を基準としながら、かなりブレていることが分かります。「配点」の要素も加わるため、自己採点で際どい方は、今後の勉強の進め方が難しいところです。

それでは、もう少し、個別に見ていきます。

2005年から2022年第Ⅱ回(30回分)までの分布

「総点数の70%」を上回った回は?

明示されている「総点数の70%」基準と比較し、上回った回、下回った回を見ていきます。

✓ 上回った回:6回
✓ 下回った回:20回
✓ ちょうど70%:4回

このデータから、総点数70%を上回った回は20%程度、つまり基本は70%よりボーダーは下回る傾向があるとわかります。そのため、ネット等で「今回は他の人たち、やたら成績がいいな・・・70%の得点率では無理か」と思っても、合格している、なんてことは十分にありえます(もちろん、その実施回の難易度によりますが)。

最もボーダーが「高かった」回は?

複数回ありますが、得点率73%となります(2011Ⅰ、2011Ⅱ、2022Ⅱ)。近年は70%を超えるケースはほぼなかったんですが、直近、令和4年の第Ⅱ回目が該当します。そのため、確率は少ないものの「70%」でも油断はできないでしょう。

最もボーダーが「低かった」回は?

2005年から2022年までで得点率「57%」(2020年第Ⅰ回)というのが最も低いボーダーとなります。そもそも得点率50%台というのはこの一度のみなので例外と考えた方がよいでしょう。最低、得点率60%はなければ、可能性はなさそうです。

直近の傾向は?

もう少し対象を絞り、2015年~2022年までの見てみます。

引用元:公認会計士・監査審査会HPの各年合格発表データから集計

短答式試験ボーダーの得点率実績、上限は「73%」、一方で下限は「60%」となります。

上限がある程度限定的に見えることから、基本、試験は難易度高めに作問されているということでしょう(出題を難化させ、下限で合格者を調整)

また、近年の実績データのみから判断すると、74%の得点率があれば、ほぼ間違いなく合格と言えそうです。一方で違う見方では、「得点率60%~73%であれば、合格可能性がゼロではない」ということです。まさに「論文式試験を見据えながら、短答式試験にも対応できる」姿勢が求められます。

「ボーダーが57%で合格できた時はラッキー」は間違い

SNSを見るとそんな声があがっていますが、これは全く正しくありません。

「実質相対試験」であることが理由の一つですが、そもそも「出題される問題の難易度が均一ではない」「受験者のレベルが同じではない」「合格者の絶対数が一定ではない」等、理由を挙げればきりがありません。

裏を返せば、これらが全て均一、同等だったのにボーダーが低ければ、「合格しやすかった」となるでしょう。

結局、恨み言の一つも言いたい気持ちはわかりますが、「ボーダー」一つ取り上げて合格しやすかったか否かを論じるのは無意味ということです。ただ、ボーダーのブレは出題難易度のブレも一因なので、出題者側のいけてなさを批判することは一理ありだと思います。

第Ⅰ回(12月)と第Ⅱ回(5月)はどちらが合格しやすい?

こちらもかなり気になる方がいるようです。普通に考えると、どちらも難易度は同じはずです。しかし、両者には明確な違いがあります。

引用元:公認会計士・監査審査会HPの各年合格発表データから集計

データ量の関係から2015年第Ⅰ回から2022年第Ⅱ回までの表示です。

明らかに「第Ⅰ回目」の方が合格しやすい傾向が見られます。これは、「12月短答⇒8月論文」の方が論文対策時間が十分に取れる等、戦略的に12月合格を狙う人が多いことが影響しているでしょう。

また、私見ですが、やみくもに論文受験数を増やすわけにはいかないため、第Ⅰ回目である程度確保し、第Ⅱ回目は受験者数の調整弁的な印象があります(私見)

いずれにしても、現行制度で短答合格を目指すなら「12月試験での合格」がベストでしょう。

専門学校のボーダー予想

令和5年第Ⅱ回短答式試験について、早速、ボーダー速報を紹介している学校もあります。下記はYoutube動画の参考リンクとなります。いずれも詳細な分析を実施しています。

CPA会計学院では恒例の3つのポイントからボーダー予想をしています。個人的には「ボーダーvs期待値分析」が興味深いかなと。「過去3回、期待値よりボーダーが5~6%高い」という事実から、受験生のレベルが年々上がっているという見解ですね(CPA会計学院は69%~71%がボーダーと予想)

こちらはTACです。Webサーベイの結果から推定していますが、こちらは70%をボーダーと予想しています(ただ、69%も可能性ありとコメント)。CPA会計学院とほぼ同じ見立てで、68%以下は合格可能性は高くないとの見立てです。

続いてLECです。こちらは66%~68%という他校より一段階、低い見立て(=CPA会計学院等より合格人数は多い見立てなのでボーダーが下がっている)です。66%未満は12月短答へ再始動とのコメント。拝見した限り、合格者数及び合格率分析の部分は薄かったので、納得感が個人的には少なかったですが、どうなるか。

改めて、詳細は各校動画をご覧ください。ちなみに、前回の第Ⅰ回では、実は「大原」のボーダーが当たっていたと記憶しています(この記事を書いている時点では未公表)

公認会計士短答式試験ボーダー分析 まとめ


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✓ 70%はあくまで基準、過去30回でブレた回は26回
✓ 最もボーダーが高いのは73%、低いのは57%
✓ 第Ⅰ回目の方が合格しやすい傾向あり
✓ 専門学校のボーダー予想は73%近辺か=近年最も高いボーダー

結局、結果が発表されるまで確実なことはわかりませんが、自己採点に応じ、準備は必要になります。現時点で収集できる情報を基に、また、専門学校講師への相談等を通じ、今後の戦略を決定しましょう。

<合格率分析シリーズ連載⑤本は下記リンクから>
★「公認会計士試験過去21年分の合格率推移徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士論文式試験の合格率を徹底分析!」の記事はこちらから
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