公認会計士試験でも「出題ミス」はある|意外に多い出題ミス 連載⑤

合格率推移分析
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公認会計士試験であっても「出題誤り」はある

連載でお伝えしている「公認会計士の合格発表から見る難易度分析」。最後の今回は、少し違った視点でご紹介します。

極度の緊張状態で取り組む受験生に対し、前提となる「出題」が間違っているということは、あってはならないことですが、意外に頻発しています。今回はそんな「出題誤り」等のイレギュラーケースにスポットを当ててご紹介します。

それは誤記等に代表される「出題誤り」等のケースです。当たり前ですが、問題は「正しい」ものとして受験生は取り組みます。しかし、過去を見返すと「出題がそもそも誤っていた」ケースがあります。しかも複数回発生している事実。

今回はそんな「まさか!?」の事例を一挙ご紹介します。最後までゆっくりご覧ください。

①受験者数の推移 前回の記事
②旧試験から令和4年新試験までの合格者数及び合格率推移 前回の記事
③論文式受験者(申込者)を分母とした合格率推移 前回の記事
④論文式受験者(答案提出者)を分母とした合格率推移 前回の記事 
⑤論文式試験合格者に占める女性比率推移 前回の記事 
⑥論文式試験合格者の年齢 前回の記事 
⑦論文式試験合格者の会社員比率 前回の記事
⑧その他、試験の「誤記」「トラブル」等 今回の記事

なお、今回の分析データは2012年(平成24年)~令和4年(2022年)分までを対象とし、発生した年のみ抜粋でまとめています。

短答式試験での「出題誤り」

公認会計士試験 年度別出題ミスまとめ 作成:CPA-MAP
参考:公認会計士・監査審査会HP

まずは表の上段「短答式試験」からです。一言で「出題ミスが多すぎる」です。

国家試験なのに、こんなに出題ミスがあるの?

そう思うのも当然ですが、事実です。もちろん出題総数に対し誤っている割合は1%にも満たない割合ですが、そもそも発生してはいけない事象です。いくら出題者が人間とはいえ、これは深く反省してほしい発生頻度ではないでしょうか。

科目別では「管理会計論」が誤り発生数トップ

誤記等の出題誤りは、基本、「財務会計論」と「管理会計論」での発生です(2022年は監査論もありですが)。集計すると、管理会計論で5問、財務会計論で4問の結果です。

計算科目は複数の数字前提や解法から、適切な正答を設定することが理論科目より難しいのでしょうか。いずれにしても「短答式試験での出題ミスは計算科目に集中」と言えます。ちなみに、理論科目は2022年に監査論で誤記ありですが、それ以外の年は発生なしです。

なお、出題に「誤記」があった場合の取り扱いは大きく2パターン。「全て正答扱い」か「影響なしのためそのまま」か。影響なしの場合(=正答する上で影響ない箇所の誤記)はともかく、「全て正答扱い」(=条件により正答できない、適切な選択肢が存在しない等)はそれなりに時間をかけた人もいるでしょうから、とりあえず全員正解にしたらいいという話ではありません。ただ、それ以外、対応法がないのが実情でしょう。

ちなみに、出題ミス9問について、内訳は「正答扱い⇒7問」「影響なし扱い⇒2問」です。出題誤記があった場合、基本は正答に影響を及ぼすケースが多いと言えます。

論文式試験での「出題誤り」

公認会計士試験 年度別出題ミスまとめ 作成:CPA-MAP
参考:公認会計士・監査審査会HP

続いて、論文式試験です。表の中段に注目。こちらは、短答式試験と比較し圧倒的に発生件数は少なくなります。しかし、発生すること自体が許されない事象にはなりますが。

出題形式にしても、論文式試験の方が複雑な印象ですが、出題内容のチェックは比較的担保されているということでしょう。

科目別では「計算科目」ばかり出題ミス

論文式試験も短答式試験同様、「計算科目」での誤記ばかりです。発生件数は大幅に減りますが、会計学が2件、租税法が1件となっています。ただし、いずれも出題に誤記はありますが全て「正答に影響なし」という扱いのため、実質影響はなしとなっています。

短答式に比べ、受験生への影響は軽微と言えるでしょう。

「出題」以外でもハプニングあり

公認会計士試験 年度別出題ミスまとめ 作成:CPA-MAP
参考:公認会計士・監査審査会HP

さて、最後は本試験で発生した「イレギュラーケース」の事件簿です。発生事案は2件のみと限定的ですが、看過できない内容のため、ご紹介します。

「電卓使用制限」について試験官の判断ミス

一つ目は、2012年の第Ⅰ回短答式試験における「電卓使用制限」です。

試験官が使用可能な電卓にもかかわらず、使用を認めないと判断したケース
引用元:公認会計士・監査審査会HP 平成24年公認会計士試験第 I 回短答式試験における試験問題の誤り等についてから引用

確かに、電卓はいろいろな機能があり、ぱっと見での判断は難しいでしょうが、人生がかかった場面でこの判断はありえないでしょう。判断が難しい、際どいケースならそれなりの時間をかけ、個別対応を検討すべきだったケースです。

ちなみに、対応措置として「次回短答式試験において受験機会を提供する措置」だそうですが、これだけ読むと受験者が一度、受験の機会を逸したという事実以外、何の解決にもなっていない気がします。

「答案用紙所在不明」の謎

二つ目は、2016年の第Ⅱ回短答式試験における「答案用紙所在不明」です。

受験後、会場で答案用紙は密封され「読取業務受託事業者」に渡され、読取作業が実施されます。その読取作業時に回収枚数と読取枚数の相違が発見。そのまま所在不明。
引用元:公認会計士・監査審査会HP 平成28年公認会計士試験第II回短答式試験における答案用紙の所在不明についてから引用

2012年から2022年までで、このようなケースは1件ですが、こちらも許されないミスでしょう。なお、対応については掲載文を読むと「本人に謝罪」という記載はありますが、具体的な措置は不明です。

公認会計士はどのくらい難しいのか?|合格率推移と難易度 まとめ


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✓ 短答式、論文式試験とも「出題誤り(誤記)」は発生している
✓ 短答式は出題ミスの発生が多く、正答に影響あるケースが多い
✓ 論文式は発生自体が少なく、また、正答に影響あるケースはなし
✓ 出題ミス以外で不運な事例も発生あり

いかがだったでしょうか。見ていただいてわかるとおり「受験生」に起因しないミスが、実は意外に発生しています。もちろん出題者も「人間」。また、出題漏れを防ぐためにも、チェックは限られた人になるでしょう。しかし、それと「出題誤り」が許されることは、関係ありません。

「誤記」がある都度、「今後このようなことがにように・・・」とコメントがありますが、そういう問題ではありません。しかも、全く何もなかった時の方が少ないとはどういうことでしょうか。この点については、試験実施主体である「公認会計士・監査審査会」について「受験生の人生がかかっている」ことを今一度意識し、取り組んでほしいものです。

ということで5回にわたった「公認会計士合格率分析」は今回で終了です。少しでも参考になれば幸いです。

<合格率分析シリーズ連載⑤本は下記リンクから>
★「公認会計士試験過去21年分の合格率推移徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士論文式試験の合格率を徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士合格者年齢を徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士試験に働きながら合格できるのか?」の記事はこちらから

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