日商簿記1級の合格率推移から本当の難易度を徹底分析|過去10年分推移

合格率推移分析
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日商簿記1級の合格者は本当に「すごい」

この記事では、日商簿記1級の難易度がどれだけ高いのか、難しいのか、そして合格することがいかにすごいのかを直近2022年11月実施の第162回までの合格率推移からご紹介します。

なお、他のサイトでは、日商簿記3級や2級と1級の合格率を横並びにして、合格率の高い低いを比較し、「こんなに合格率が低いから日商簿記1級は難しい」みたいな記事も見かけます。結構、多く見かけませんか?

ただ、その理解は誤りです。単純に「合格率」のみに注目しては、本当の難易度はわかりません。ミスリードになるので、むしろすべきではないと考えます。仮に合格率が、日商簿記1級が8%、会計士試験が10%だったら、日商簿記1級の方が難しいと思いますか?

この記事では、そんな「本当の合格率、難易度」を解説することで、学習時間が500時間~1,000時間と言われる難関試験、日商簿記1級とは何なのか、そのすごさを解明します。

日商簿記1級の試験範囲

日商簿記1級の「本当の難易度」「すごさ」を語る前に、そもそもどのような試験なのか、その概要をご紹介します。

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引用元:商工会議所の検定試験-1級

上記は商工会議所の検定試験公式HPからの引用です。日商簿記の3級、2級を受験したことがない方はイメージがつかないかもしれませんが、これまで受験、合格された方はある程度、難易度が想像できるかと思います。ポイントは、範囲の広さと合格率の低さにあります。

日商簿記1級の範囲と合格率
●範囲の広さ 2級までの「商業簿記」「工業簿記」に「会計学」「原価計算」が追加
●合格率の低さ ほぼ10%程度で推移。「相対評価」で合格者が限定されていると推測

これだけ見ても、「何か大変そうだな」とイメージしてもらえるかと思います。範囲の広さについては、2級までの商業簿記、工業簿記の範囲がそもそも広がるとともに、科目として新たに「会計学」「原価計算」が加わります。商業簿記の理論版が会計学、工業簿記と親和性が高く計算メインなのが原価計算です。

ただ、そうはいっても試験範囲を定めた合格基準のある検定試験です。しっかり学習をすれば合格できる!と信じたいのですが・・・そうはいかないのが、この「日商簿記1級」の難易度の高さ、すごさになります。その理由については、後述します。

日商簿記1級の合格率推移から難易度を知る

日商簿記1級の難易度、すごさを知る上で、合格率の推移は有用です。ここでは、一般的なサイト等で言われる「日商簿記1級の合格率は10%程」というのが本当なのか、また「相対評価」を裏付ける情報が見られるのかをお伝えしたいと思います。

なお、データは第128回(2011年6月)~直近の第162回(2022年11月)までの過去10年間の推移となります。グラフはごちゃごちゃしていますが、水色の折れ線が対受験者の合格率(一般的に理解されている合格率)になるので、注目してみてください。

数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP
数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

いかがでしょうか。多少の変動はありますが、10%近辺で推移していることがわかります。また、今回取り上げた2011年(128回)から2022年(162回)の過去10年、24回実施分の合格率平均は、実受験者を母数にした場合「10.3%」であり、まさに「日商簿記1級の合格率は10%で推移」と言えそうです。

なお、直近4回を見ると157回は7.9%と少し低めでしたが、その後の158回~直近の161回まではほぼ10%と難易度は一定という傾向も見られます。

日商簿記1級の合格率推移で注目したいポイント

ここで、合格率の推移を見る上で是非、注目してほしいポイントがあります。それは、147回と149回、156回と157回で、合格率の差を見ると6%~7%の乖離があるところです。

これについては、一つの仮定として、何らかの理由により合格率が10%から大きく乖離した場合、次の検定試験で調整され、平均すると10%程度の合格率になるよう調整されている、と推測されます。つまり、前述で記載した「相対評価」の裏付けになりそうです。

毎回の試験で合格率10%程になる問題を作成することが難しいため、基本は配点箇所で調整しつつ、それでもブレた場合は、次回の検定で合格率を調整しているのではないかと思われます。

あめ
あめ

 日商簿記検定1級の合格率はおおむね10%で推移
 合格率が10%から乖離した次の検定の合格率は逆方向にブレる?(相対評価?) 

2022年11月実施の第162回日商簿記1級の総評は?

ここ数年で申込者、受験者が最も多い実施回となっています。合格率は10.4%と前回からほぼ横ばいとなります(前回は10.1%)

続いて、問題及び商工会議所の講評を見ました。講評でもかなり熱く触れられていますが「収益認識基準」の出来の悪さが目立っているようです。よくあることですが、近年追加された論点は、受験者の優先順位が低い、又は習熟が進んでいないケースがよくあります。その結果が顕著に出た回でしょう。

実際、出題内容はどうかというと「変動対価」の処理が問われています。これは、従前の処理法から変更しているトピックでもあり「知っていれさえいれば十分解ける」内容に見えます。どうしても新論点に対しては「難しい」という先入観を持ちがちですが、しっかり理解すべきという出題者側のメッセージと言えそうです。

その他、BS作成を中心に出題する珍しいケースであったことや、原価計算を導入している企業では結構使われる活動基準原価計算(ただ、実務ではより発展的、配賦定義も多様)、一つ間違うと命取りになる意思決定会計の問題と幅広い出題となっていましたね。

個人的には、通常の実施会とほぼ同様の難易度という印象です。

引用元:日本商工会議所-簿記出題意図・講評 https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/review

日商簿記1級の難易度は受験者によって難しくもあり、簡単でもある?

この記事のメインです。日商簿記1級の「本当の難易度」「すごさ」についてお伝えします。表題では「受験者によって難しくもあり、簡単でもある」と記載しましたが、どういう意味かわかるでしょうか?

 勉強している人にとっては簡単で、準備不足の人には難しいってこと?

確かに、そのとらえ方もできます。しかし、ここでの意味は、「受験者がどの試験の合格を目指しているかによって、とてつもなく難しくなったり、簡単になったりするということです。どういう意味か?わかりづらいですね。もう少し記載します。ポイントは、日商簿記1級の「受験者層」です。

日商簿記3級や2級の場合、通常、その級に合格するための勉強をします(ただ、2級を勉強し3級と2級のダブル受験パターンはありますが)。しかし、日商簿記1級の場合は少し異なります。受験者には、日商簿記1級の合格を目指して勉強した方に加え、税理士試験で簿記論・財務諸表論を勉強している方、そして会計士試験の勉強をしている方が含まれます。

この税理士受験生や会計士受験生達は、日商簿記1級の合格を目指しているわけではありません。しかし、内容的には、日商簿記1級よりさらに広く、難易度の高い内容を学習しています(なお、税理士受験生の場合、原価計算あたりは特に個別対応必要かと思いますが)。そのため、日商簿記1級は「腕試し」の位置づけになります。

会計士受験生で言えば、基礎答練レベルが日商簿記1級のイメージです。会計士合格レベルであれば、落ちることはまずありません(私の受験時代でいえば、受験仲間5人全員合格。他もそのような感じだった)。

するとどうでしょうか。前述で、日商簿記1級の合格率はおおむね10%程度とお伝えしました。しかし、その10%を税理士受験生、会計士受験生がまず、奪っていきます。残った枠から、日商簿記1級の合格を目指し勉強した方が合格するイメージです。

もちろん、日商簿記1級の学習者が税理士受験生や会計士受験生を凌駕することもゼロではありませんが、そもそも学んでいる範囲、難易度が別次元なのでほぼその可能性はないといえます。そう考えると、結論として表題の表現となるわけです。

あめ
あめ

 日商簿記1級は、日商簿記1級を勉強している者にとっては合格が極めて難しい
 でも、税理士や会計士受験生で合格レベルの者にとっては簡単

日商簿記1級学習者の合格イメージ 作成:CPA-MAP

日商簿記1級の難易度、すごさと受験をすすめない理由 まとめ


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最後にまとめです。実は、個人的には、日商簿記1級を「就職や転職のため」や「2級まで合格したから1級まで目指してみよう」みたいな感覚では、受験することはおすすめしません。

なぜなら、前述のとおり、「日商簿記1級の合格を目指し勉強した者」にとって、合格率は実際に示されている10%より低いものであり難易度が凄まじく高いこと、結果、費用対効果が合わないと考えるからです。

 今、勉強しているのにそんなこと言うなよ・・・

こんな声が聞こえてきそうですが、事実は事実としてお伝えします。そして、その上でもなお、「日商簿記1級に合格したい」「合格してみせる」という気持ちが崩れなければ、きっと、この恐ろしい試験に合格することも可能だと思います。

そして、日商簿記1級に合格したら、それは思いっきり自慢してください。とんでもなくすごい試験であることは間違いありませんので。

補足.日商簿記1級を目指す時の専門学校ご紹介(2022年8月時点)

専門学校の利用は、お金がかかるという点で敷居は上がりますが、どうしても合格したいなら、少しでも合格確率を上げたいなら、オススメします。基本、インプットとアウトプットに分かれ、答練、公開模試までがセットです。気になる方は、まずは資料請求で調べることから始めましょう。

通学も通信もDVDも多彩なコース選択が魅力|資格の大原

講義は全65回ですが、答練が13回含まれているのでインプットは実質52回。授業は150分×52回=『130時間』想定。今回紹介する中では最もインプット時間が少ない設定ですね。私は会計士試験でお世話になりましたが、簿記の強さはやはり特筆すべきでしょう。時間当たり単価は少し高め。
(参考)2023年6月目標
Web通信 165,000円 
@1,269円/授業1時間当たり

日商簿記1級ストレートフルパック|クレアール簿記検定講座

検定目標月+1年間の保証制度があり、検定月から1年間はWeb講義が受講できるという特徴があります。インプットは『160時間』想定。クレアール=非常識勉強法で超効率的勉強のイメージですが、日商簿記1級のインプット想定時間を見る限り、着実なカリキュラムの印象。アウトプットの答練は20回がセットになっています。定期的に割引があるようですが、割引後の単価は他の追随を許さない安さ。
(参考)2023年6月目標
Web通信 145,000円/95,700円
8月割引:@598円/授業1時間当たり

1級パーフェクトコース|LEC東京リーガルマインド

講義は初学者向けの66回と既学習者向けの40回の選択というのが特徴。アウトプットの答練は、全11回の構成です。初学者向けなら、授業150分×66回=『165時間』想定。今回紹介した学校の中では一番、インプットが厚いようです。
(参考)2022年11月目標
Web通信 132,000円 
@800円/授業1時間当たり

↓会計士試験の過去20年分合格率推移については下記の記事をご覧ください。

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