働きながら「公認会計士合格」を目指す難易度
公認会計士試験を目指す上でしっかり理解したい「合格率」。2006年の試験制度変更後、合格者の「職業別構成比」に大きな変化が出てきています。それは「社会人合格者」の割合です。SNS等でも「働きながら合格することができました!」という声も見られます。また、採用側も「短答免除枠」等で論文式試験に合格していない人員の採用をしているケースも。
そこで今回は「働きながら会計士試験を目指す」ことがどの程度の難易度なのか等を含め、合格者の「職業別構成比」を使用して検証してみたいと思います。これから会計士を目指す方は、「自分がどのような受験環境で臨むべきか」を判断するヒントになるはず。是非、最後までご覧ください。
②旧試験から令和4年新試験までの合格者数及び合格率推移 前回の記事
③論文式受験者(申込者)を分母とした合格率推移 前回の記事
④論文式受験者(答案提出者)を分母とした合格率推移 前回の記事
⑤論文式試験合格者に占める女性比率推移 前回の記事
⑥論文式試験合格者の年齢 前回の記事
⑦論文式試験合格者の会社員比率 今回の記事
⑧その他、試験の「誤記」「トラブル」等
公認会計士試験合格者の「職業別構成比」の視点で検証
それでは、今回は「会計士論文式試験合格者の職業別構成比推移」を見ていきます。基礎データは2005年(旧試験)から2022年までとなります。
*記載内容は、会計士旧試験制度の2005年、及び新試験制度の2006年~2022年(一部異なる)について、公認会計士・監査審査会HPのデータを基に作成しております。個人で作成しているものなので、誤植などあれば、お知らせください。
公認会計士試験合格者の「職業別構成比」からわかること
それでは、見ていきます。
注)下記分析は、原則「合格者全体に占める構成比」の記述です。「絶対数」や「合格率」等に言及している場合は、別記しています。
✓社会人合格者者割合は2015年に最高値(11.2%)。2005年以降、二桁は他に2017年(10.7%)のみ。
✓学生/無職合格者割合は2012年に最高値(90.1%)。90%超は2005年の旧試験以来。
2005年とそれ以降で明らかに異なる「無職合格者」構成比
2006年の赤枠に注目です。前年より大幅にグラフが急落しています。この要因は「会計士補合格者の発生」と「無職合格者の急減」です。
旧二次試験合格者は、新試験制度下で特定科目について再受験・合格する必要があり、合格者の大勢を占める結果になりました。また、「無職合格者」については、2005年/1,028人⇒2006年/564人と絶対数が大幅に減少。これはこちらでも紹介しましたが、2006年の旧二次試験合格者除きの合格率は旧試験と同レベルであり合格者数自体少なかったことと、学生合格者の絶対数が相対的に伸びていたことに起因します。
なお、無職合格者急減=そもそもの受験者数減ですが、これは、旧試験で挑戦していた無職受験生が試験制度変更を期に撤退したケースもあると思われます(逆に、学生合格者増=学生受験者増は、新試験制度からの新規参戦が増えたと推測)
2006年から2010年あたりまでは「旧二次試験合格者」の影響あり
上述の推移表は「構成比」で表示しているため、母数に「旧二次試験合格者」を多く含む2010年あたりまではかなり歪んで表現されています。通常の受験者は、2011年以降の構成比で評価することが妥当です。
2016年から2022年までの「学生合格者」の推移
2015年あたりまでは乱高下しながら40%近辺で推移しています。しかし、2016年からほぼほぼ右肩上がりとなり、2022年には「58.2%」にまで上昇。こちらでも記載しましたが、会計士試験合格者の若年化が顕著に見られます。なお、この学生は「大学生」が大勢で「専修学校生等」は各種学校受講生の区分に含まれます。そのため、これらを合算した「学生合格者」の場合、60%超となります。
現在の会計士試験は、「在学中に勉強を開始し、在学中に合格する」ことがスタンダートと言えそうです。
2017年から2022年までの「無職合格者」の推移
2017年/11.0%⇒2022年/18.6%と「学生合格者」と同様、右肩上がりで推移しています。ただ、2005年旧試験の「78.6%」と比較すると大きな乖離が見られます(合格者の絶対数では2005年/1,028人⇒2022年/271人)
やはり「試験制度変更」や「科目合格制度」の影響もあり、「学生合格」や「社会人合格」の割合が増加し、相対的に「無職専念型」の合格者は減少していると言えそうです。
旧試験との違い、近年の特徴
やはり旧試験制度時との違いは「無職合格者」でしょう。新試験制度では「在学中合格」や「働きながら合格」の可能性が高まったこともあり、受験者総数とともに無職専念型の合格者は大幅に減少しています。また、近年の傾向は「若年化」。こちらの記事で紹介した合格者低年齢化とともに「学生合格者増」からもわかります。
勉強を開始するなら「少しでも早く、若い方がいい」ということが言えます。
「学生+無職合格者」と「社会人合格者」の推移に注目|働きながらの合格はやはり厳しい
ここでは、職業別合格者割合について「学生+各種学校受講生+無職」=「学生+無職合格者」(黄色折れ線)と「会社員+公務員+教員+教育・学習支援者」=「社会人合格者」(灰色折れ線)の区分でさらに見てみます。
この中で「社会人・働きながらの合格」難易度についても言及したいと思います。
「学生+無職合格者」の推移について
「学生+無職合格者」の2006年-2007年の平均は「48.9%」。ただし、これは他の合格者区分に「旧二次試験合格者」を多く含んだ値です。近年では参考になりません。
続いて、2008年から2017年までの平均は「83.5%」。「旧二次試験合格者」の歪みは薄まり、80%台が主。
そして、2018年以降の2022年までの近年は、平均「84.0%」とほぼ横ばいの推移。グラフで見ると一目瞭然ですが、現状「合格者の10人中8人以上は無職か学生」と言えます。
「社会人合格者」の推移について|数値からは「非常に厳しい」ことがわかる
今回お伝えしたいメインテーマです。こちらも2006年-2007年平均は「2.4%」ですが、「旧二次試験合格者」の歪みが出ています。
それが2008年から2017年では「6.6%」へ上昇。2018年以降2022年までの近年は「8.7%」とさらに上昇。「会計事務所員(税理士含む)」が少し減少傾向にあるため、相対的に上昇していることも一因ですが、「社会人合格者」は少なからず上昇傾向にあることが言えそうです。
こうした事実もあり、近年「働きながら会計士試験に合格!」というコメント、記事をSNSやブログでよく見かけます。しかし、これはあくまで「社会人の合格者」のみに着目した話です。相対的に見て、合格者全体に占める割合が「8.7%」というのは極めて低い数値と見るべきでしょう。つまり、数値で見る限り、「思っている以上に会計士試験で社会人合格・働きながら合格することは難しい」ことが言えます。
これから会計士試験の挑戦を考えるなら「安易な社会人での挑戦」には注意が必要です。
「会計事務所員(税理士含む)」の合格率
この区分には、監査法人に働きながら勉強している者が大勢含まれます。上述の「社会人」と働いていること自体は同じですが、「短答合格」している、また「科目合格」しているケースも多く、別枠で見てみます。
まず、構成比はブレが大きいですが2018年以降2022年までの平均は5.1%。ここで、注目したいのは「合格率」です。2022年(令和4年)の場合ですが、全体の合格率は「7.7%」でした。これに対し、職業別の合格率を見ると、
学生:10.0%(学生合格者÷学生受験者)
会計事務所員:9.4%(会計事務所員合格者÷会計事務所員受験者)
となります。例年、「学生」は全体合格率より高い傾向ですが、2022年は会計事務所員についても、全体合格率より高い結果が出ています。これは非常に珍しい結果です(しかも、無職の合格率よりも高い)
働きながらという厳しい環境にありながら「短答免除」「科目合格」を生かし、合格までつなげた稀有な例と言えるでしょう。そして、この結果は「働きながら合格」することは決して夢ではないことの証明にもなります(一方で、無職合格率は反省すべきかもしれませんが)
働きながら「公認会計士合格」を目指す難易度 まとめ
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それでは最後に、今回の記事のまとめです。
✓ 2006年、2007年は「旧二次試験合格者」が含まれるため、構成比単純比較は要注意
✓ 社会人合格者(会計事務所勤務除く)は、10人中1人もいない(極めて厳しい)
✓ 2022年は会計事務所員の合格率が学生に次ぐ高さ(9.4%>全体7.7%)
本日はここまで。続きのテーマについては引き続き次回。
<合格率分析シリーズ連載⑤本は下記リンクから>
★「公認会計士試験過去21年分の合格率推移徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士論文式試験の合格率を徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士合格者年齢を徹底分析!」の記事はこちらから
★「公認会計士試験でも出題誤り頻発!?」の記事はこちらから
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