「棚卸立会」の実務|監査論と実務

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若手会計士の登竜門「棚卸立会」のご紹介

「棚卸立会」は、監査法人入社の1年目後半~3年目くらいまでの若手が中心にアサインされる業務です。また、経理担当者も監査人側が「棚卸立会」を実施できるよう調整、アレンジするために関与するでしょう。今回はそんな若手会計士や経理担当者が経験するであろう「棚卸」「棚卸立会」について、監査実務を知るシリーズとしてご紹介します。

これから監査法人へ入社する方や若手会計士で棚卸立会未経験の方、そして経理実務担当者の方もきっと役立つ情報になるでしょう。是非、最後までご覧ください。

ボリュームが多いため「棚卸立会」について、下記のテーマ別に記事にしています。
①「棚卸立会」とは何か? 定義、概要
②「棚卸立会」経理担当者対応
③「棚卸立会」監査人対応
④「棚卸立会」をやってみた話

今回はまず、①のご紹介となります。それでは早速、ご覧ください。

「棚卸立会」の定義

会計士の「監査論」を勉強した方なら、「知っているよ」という話でしょうが、念のため、まずは定義から抑えます。

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引用元:監査基準委員会報告501 第3項 抜粋

監査基準委員会報告501「特定項目の監査証拠」からの引用となります。委員会報告では、「棚卸立会」単独ではなく、「特定項目の監査証拠」というカテゴリで括られ、その中の監査手続きの一つとして詳説されています。

では、改めて定義ですが、要は「帳簿に記録されいる「物」が実際にあるか、確認する会社の手続きを観察すること」です。ポイントは、「会社の手続きを“観察”」という点です。つまり、会社が行うのが「棚卸」、それを監査人が観察するのが「棚卸立会」となります。この点は混同しないようにしましょう。

「棚卸」「棚卸立会」の概要

次はもう少し具体的な内容紹介です。前述で「棚卸」と「棚卸立会」の違いに触れましたので、ここでは、「棚卸」(経理担当者視点)「棚卸立会」(監査人視点)の2つの視点から、その実施内容を見ていきます。

「棚卸」の概要(経理担当者視点)

月次や四半期、半期、年一、様々なスパンで会社では「棚卸」を実施しています。「棚卸」は、端的に言うと在庫の数を数えて、帳簿と確認し齟齬がないかを把握する作業のことです。年度末には小売業でよく、店頭、倉庫含め、一斉に行われています。これは、監査のためではなく、そもそも在庫管理ができているか、紛失している物品はないか等を確認するためなので、監査対象企業でなくとも実施するのが通常です。

ただ、サービス業メインの場合(=実物の在庫を抱えていない場合)は、棚卸対象物がないので、未実施の場合もありえます。いずれにしても、「棚卸」は経理担当者であればほぼ、必ず聞くワードになるでしょう。

企業規模と棚卸の実務

「棚卸」として行うこと自体は企業規模が変わっても同じですが、その実施体制は大きく異なります。中小規模の企業では、経理担当がそのまま「棚卸」作業に駆り出されるこも珍しくありません。一方で、大企業の場合は、保管場所・保管拠点も複数あり、在庫数や品目も多数になります。その場合は、拠点毎の現場部門が「棚卸」作業の仕切りを行い、本社経理部は、各拠点、各部門の棚卸結果を収集、必要に応じ経理処理へ反映させるという流れになります。

「棚卸」の計画から実施まで

一定以上の規模(棚卸は現場部門が仕切るケース)を前提にすると、おおよそ、以下のような作業フローとなります。

■現場部門
①「棚卸実施要領」の策定、周知
②保管場所のレイアウト図用意
③作業スケジュール、人員アサインの策定
④入出庫停止手配 重要
⑤棚卸実施
⑥棚卸結果作成・送付
■本社経理部
⑦棚卸結果の入手
⑧棚卸結果の経理処理

各項目の詳細については、次回以降の記事で触れたいと思います。

「棚卸立会」の概要(監査人視点)

企業が行う「棚卸」の全てに立ち会うわけではありません。監査手続き上、会社の実施する「棚卸」という行為をどのように扱うか次第です。例えば、「たな卸資産の実在性、網羅性検証のために、企業の「棚卸」というコントロールに依拠して、監査手続きを実施する」という前提に立つなら、リスク評価と企業が実施する「棚卸」の頻度(=コントロールの頻度)から、立ち会う回数を決定するイメージです。
また、立ち合いの現場も様々。店舗のバックヤードに行くこともあれば、辺鄙な場所にある湾岸倉庫に行くことも。どの場所に行くかはアサイン次第です。なお、棚卸の実施時期はほとんどの企業が似たタイミング(年度末等)になるので、若手の会計士は一斉に駆り出されます。そして、マンニングが不足しがちなので、通常「棚卸立会」は一人で現場へ乗り込むことが多いでしょう。そのため、新人にとっては、プレッシャーもあるなかなか大変な業務だったりします。

おまけの話.インチャージ自らが「棚卸立会?」

たまに若手が出払って人がいない場合、インチャージ自ら出向くケースもあります。というか、インチャージになると監査業務はもちろん、社内外の調整仕事が多くなり、たまに「一人で現場に行きたい」衝動に駆られたりします。その発散の場として「棚卸立会」が選ばれることも・・・。

「棚卸立会」の計画から実施まで

監査人が実際に会社が行う「棚卸」に立ち会うまでの流れは、おおよそ以下のとおりです。

①「棚卸」実施要領や在庫リスト等を事前に会社から入手
②「在庫リスト」からテストカウントサンプルを抽出
③会社の「棚卸」に立ち合い、観察する
④②のサンプルに応じテストカウントを実施(リストからモノ)重要
⑤現場のモノが「在庫リスト」に含まれているか確認(モノからリスト)重要
⑥現場担当者へ向けて実施結果の講評
⑦最終結果を会社から入手(棚卸結果、差異状況等)
⑧最終結果についての経理処理をレビュー
⑨会社の「棚卸」について監査人として評価

こちらも各項目の詳細は、次回以降の記事で触れたいと思います。

「棚卸」「棚卸立会」を知る まとめ


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“棚卸立会のポイント”
・「棚卸」=企業が実施、「棚卸立会」=監査人が実施
・「棚卸」は現場部門が仕切るケースが多
・「棚卸立会」は若手会計士がアサインされる

「棚卸立会」をテーマに綴る第一弾、定義や概要を中心にご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。「監査論」等で学んだ知識と実際の実務イメージが少しでもつながってくれば幸いです。そして、次回は、より具体例を取り上げながら説明していきます。引き続き、お楽しみください。

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