「棚卸立会」の実務|経理担当者の対応 連載②

監査&経理実務の知る
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「棚卸」における経理担当者の作業を知る

前回に引き続き、「棚卸」「棚卸立会」の実務についてご紹介する第2弾。今回は、より実務の内容に踏み込んでお話したいと思います。

若手会計士なら避けて通れない実務ですが、その対応には当然、企業側で経理担当者も関与します。今回はそんな企業側「経理担当者」作業のイメージでご紹介します。

ボリュームが多いため「棚卸立会」は下記のテーマ別に記事にしています。
①「棚卸」「棚卸立会」とは何か? 定義、概要 前回の記事
②「棚卸」経理担当者対応 今回の記事
③「棚卸立会」監査人対応
②「棚卸立会」をやってみた話

「棚卸」の手順|経理担当者の対応

監査人が行う「棚卸立会」の前提として、まずは「棚卸」が何なのか、どのように行われるのかをご紹介します。

おおまかな流れは、下記のとおりです。

■現場部門
①「棚卸実施要領」の策定、周知
②保管場所のレイアウト図用意
③作業スケジュール、人員アサインの策定
④入出庫停止手配
⑤棚卸実施
⑥棚卸結果作成・送付
■本社経理部
⑦棚卸結果の入手
⑧棚卸結果の経理処理

それでは、各項目について、以下、詳説していきます。

「棚卸実施要領」の策定、周知

棚卸の会社方針のようなものです。企業規模によっては、部署・部門毎で設定されていることもあります。実施要領の中では、下記のような記載がされます。

A.棚卸対象品目の明示
xx部門が有するxx品や、xx倉庫に保管されているxx商品全て 等
B.実施時期の明示
月次、四半期、年次等のスパンを記載
C.作業実施の基本事項
棚卸のコントロール主体、責任者の明示
D.入出庫の停止期間
E.作業手順
⇒カウント者とカウント結果を帳簿と照合する者の複数アサインであることを明示
⇒カウント後は署名、ダブルチェックを実施する旨
⇒差異があった場合の対応方針
⇒棚卸実施後の報告方法
参考)棚卸実施要領イメージ 作成:CPA-MAP

どこまで記載するかは会社で異なりますが、主に上記のような項目が見られます。なお、監査人にも棚卸に先立って、提出することになります。

保管場所の「レイアウト図」用意

参考)倉庫レイアウト図 作成:CPA-MAP

棚卸対象の場所、地形の把握です。

棚卸対象の場所を明確にし、実施ロケーションの漏れがないようにする目的があります。また、保管が委託先倉庫の場合、他社の製品も同倉庫で保管されているケースがあるので、「倉庫内のどの部分が自社在庫か」を明確にする意味でも大事です。

作業スケジュール、人員アサインの策定

当たり前ですが、棚卸中はモノを動かすわけにはいけません(循環棚卸の場合は除く)。

一時点で瞬間的に止めて、その時の帳簿と実物を突合することが必要です。しかし、ビジネスを行っている以上、止めるタイミングは非常に難しいものです。そのため、事前の調整が必須となります。

限られた期間で集中的に、かつ正確に棚卸を終えるため、事前のスケジュールおよび人員アサインは大切な手続きです。

入出庫停止手配

前述でも記載しましたが、棚卸期間中にモノが動かないよう、棚卸対象の場所への入出庫を停止する手配をします。

補足.なぜ、棚卸中にモノを動かしたらいけないのか?

棚卸は「在庫リスト」と「実物」の数量一致を確かめる手続きです。リスト出力時からモノが動くと、当然、実物の不一致が生じます。不一致であれば、原因分析を行うことがありますが、最初から発生を防げる不一致なら、起こらないように実施しましょうという話です。

棚卸実施

実際の棚卸を実施します。

保管場所の大小、棚卸開始時間、投入されるマンニング等によってどのくらい時間を要し、いつ終了するかは変わります。現場も港近くの倉庫もあれば、店舗のバックヤード、店内ということも。

棚卸結果の入手

棚卸実施内容について結果を入手します。実際に棚卸を実施した現場部門がとりまとめ、それを本社の経理部へ共有する流れです。

補足.棚卸差異が発生した場合は?

まず「経理処理」ではありません。最初に行うのは「原因分析」です。原因次第で経理処理も変わる(PL計上科目が異なる)ケースもありますからね。また、原因についてですが、「減耗摩耗」「盗難等による消滅」「原因不明」等、さまざまです。追跡が難しいケースもありますが、しっかり調査が必要になります。

棚卸結果の経理処理

結果受領後、差異があれば経理処理を行います。なお、差異金額等にもよりますが、会社によっては、当該処理について、社内決裁を要するケースもあります。

なお、金額の多寡も気になりますが、そもそもあるべき在庫がない、紛失可能性がある場合は、「質的」重要性も懸念があるため、注意が必要ですね。


経理担当者視点としては以上となります。

とにかくスケジュールがタイトなので、しっかりとした事前準備・アレンジが大事です。

「棚卸」の実務 経理担当者の作業|まとめ


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✓「棚卸実施要領」で大枠の実施内容をまとめ、周知
✓「レイアウト図」で棚卸対象場所の網羅性を担保
✓「入出庫停止」を忘れずに
✓スケジュールがタイトなため、事前準備が大事

いかがだったでしょうか。今回は棚卸実施者(=会社側)視点での説明でした。当該理解をふまえ、次回は棚卸立会者(=監査人)視点をお楽しみに。

★連載①「棚卸」「棚卸立会」とは何か、概要まとめはこちら

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