Q9①.経理で役立つエクセルスキル|伝票起票から変動分析まで

現役会計士へのQ&A集
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経理実務のエクセル①|経理実務と重ねて関数の使い方をイメージする

Q.よく「エクセルは使う」と聞きますが、経理実務でどのように「エクセル」を使うんでしょうか?

A.とにかく「何でも」使います。


「エクセル」と聞くと、「表計算」とか「グラフ」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、企業によりますが、「何でも」エクセルで済ませてしまうケースもあります。それは、議事録まとめや、スケジュール表作成、業務でのタスク管理表等々。本当に「何でも」使われます。そのため、経理に関わらず実務で必須のツールと言えます。

ここで、様々なサイトで「エクセル」の使い方は紹介されていますが、内容は主に「個々の関数の使い方」に終始しているケースが多い印象です。そのため、このブログでは、より「経理実務」を意識したエクセルの使い方にスポットを当て、ご紹介していきます。

最後までご覧いただければ「経理で使うエクセル実務」がイメージできるはず!

あらゆる場面の「経理実務」でエクセルを使いこなす

さて、経理実務でエクセルを使うケースは、下記のようなエースがあります。

①伝票起票 今回の記事
②入力内容チェック 今回の記事
③変動分析
④決算書作成
⑤決算データ収集
⑥個別論点検討
⑦監査対応
⑧その他、諸々

ぱっと浮かぶものだけでもこれだけあります。以下、これらが具体的にどのような作業なのか、ご紹介していきますが、ボリュームが少し多いため、複数回に分けて記事にしています。

今回は、①伝票起票から③変動分析までです。

『伝票起票』でエクセルを使う 

エクセル難易度 ☆☆☆☆
作業難易度 ★★☆☆☆☆


SAP、勘定会計、弥生会計、TKC等々・・・数多くある会計システムのほとんどで利用できるのが「エクセルで作成した仕訳を会計システムへインポート」する機能です。要は、エクセルの決まったフォーマットに入力すれば、会計システムへ読み込ませるだけで、複数の仕訳を一括登録できる便利機能ですね。

もちろん、各会計システムでは「伝票入力」のメニューがあるので、そこから起票することはでき、その場合はエクセルは使用しません。ただ、①毎月定例の仕訳、②四半期決算毎に投入する仕訳、③明細数が多い仕訳等をまとめて投入する場合、エクセルで作成する方が効率的なケースが多くあります。

例えば、前回登録した内容で「金額だけ変更」するようなケースですね。もちろん、会計システム内でも「伝票内容コピー」等の機能がありますが、コピペ一つとっても、エクセル作業の方が操作性が高いことはメリットです。そのため、仕訳数が多い企業では活用されているでしょう。

伝票起票で使用するエクセルスキル

難易度については、エクセル的にも、作業内容的にも「易」となります。

エクセル関数等については、基本は「ベタ打ち」メインなので高いスキルは不要でしょう。また、作業的にも、貸借、科目コード、日付、金額、税コード、摘要等を入力するだけなので難易度は低めです。

ただし、各会計システムで求められる「フォーマット」に合致することはポイント。ありがちなのは、「各セルに一つの情報しか入力してはいけない」とか、「半角で入力」とか、「必須項目の漏れ」等です。いざ、インポートしてみると「エラー」読み込みできない・・・みたいなことがよくあります。

いずれにせよ、慣れればすぐに解決できる問題ですが、注意が必要です。

『入力内容チェック』でエクセルを使う

エクセル難易度 ★★☆☆☆
前任者あり ★★☆☆☆ 
未経験 ★★★★


企業規模によって異なりますが、一般的に大企業における経理(=本社経理部)は、起票業務は基本、行いません。伝票は現場・窓口部門の起票担当が行うケースが多いでしょう。

では、本社経理部は何をするのか?ですが、それは「チェック」です。何十、何百という拠点で入力された内容を俯瞰的視点で確認する役割が求められます。その確認を行う際に使用するのが「エクセル」となります。

では、具体的にどのように行うかを見ていきます。

・会計システムから投入仕訳データDL
⇒例)該当月、該当科目、該当部門等のメッシュで明細を抽出
 通常、抽出データはエクセル形式(xlsxやcsv)
・抽出データについて、ピボット、フィルタの条件指定により異常データを検出
⇒例)「その他経費」勘定で金額が「100万以上」、取引先が「xxx」を抽出
 例)「作業外注費」勘定で金額が「マイナス(逆残)」を抽出
クリックすると拡大
例)入力内容チェックエクセルイメージ 作成:CPA-MAP 

異常データの検出方法は、科目等によって性格があります。その性格毎にメッシュ、条件指定により明細を抽出すること、それが「入力内容チェック」となりますが、こうした作業は経験が求められます。

入力チェックで使用するエクセルスキル

さて、難易度についてですが、エクセル的には「易~普」となります。前述のとおり、抽出データをピボット、フィルタで加工できれば問題ないでしょう。一方で作業的には、経理経験や会計知識があるか否かが大きく影響します。

つまり、①会計システムからどのようなメッシュでデータを出力するか、②出力データからどのような条件で異常性を検知するか、は経験、知識次第。初めて自分が仕事をする場合、前任者がいればそうした方法を教えてもらうこともできるでしょう。しかし、教えてくれる人がいない、ゼロから行う場合、この作業は非常に大変になるでしょう。

変動分析でエクセルを使う

エクセル難易度 ★★☆☆☆
作業難易度 ★★★★★


入力内容チェックとリンクする部分も多いですが、経理に本来的に求められる業務の一つです。

前述の「入力内容チェック」は、どちらかというと「誤りの検出」が目的です。一方で「変動分析」は、「誤りの検出」の視点もあれば、分析した内容を「経営へ報告」する視点もあります。

明細一つ一つでは、なかなか企業全体の動きは見えてこないものです。それを、集計された結果として俯瞰的に見て、検証し、分析する作業、それが「変動分析」です。

では、具体的にどのように行うかですが、以下のような方法があります。

・会計システムの「前年比」「計画比」等のメニューからデータを出力
通常、代表的なメッシュについては会計システムメニューとしてデフォルトで用意されている
・出力データを深堀する
例)前年差1,000百万以上、変動率±20%以上の項目を抽出、該当項目について、勘定明細を抽出し明細内容を精査

もちろん、メニューで設定できない条件については、各年度のデータを個別に出力し、エクセルで並べて、増減や合計を算出することもありますが、ケースバイケースですね。

変動分析で使用するエクセルスキル

こちらは、一見すると「難しく」感じますが、エクセル作業的には「易」です。

関数としては「SUM」や「加減乗除」の式さえ使えれば問題ありません。もちろん、人によっては、「条件付き書式」等を使用して数値が算出されると、条件に該当するセルの色が変わるような仕組みにする人もいるでしょう。ただ、それもおまけのようなもの。最低限のスキルという点では、平易です。

むしろ、大事なのは検出した後の分析作業。「前年より多額の変動がありました」で終わってしまっては「???」となります。そこから、「原因」を探り、異常性がないのか「検証」し、それをまとめて「報告」することが目標です。その点、経理初心者には難易度高めの業務となるでしょう。

経理で役立つエクセルスキル① まとめ


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✓ 伝票起票は会計システム利用ならそれほど考えなくて良い
✓ 入力内容チェックや変動分析は、エクセル難易度は低いが作業的には経験が求められる

いかがだったでしょうか。今回は、経理実務の「伝票起票」「入力内容チェック」「変動分析」について、どのようにエクセルが使われるかをご紹介しました。内容的には、「ベタ打ち」「SUM関数」「加減乗除」「ピボット」「条件付き書式」くらい使えれば、十分ものばかり。

エクセル難易度だけであれば、ビビることはないということです。どちらかというと、エクセル作業後の「分析」が課題でしょう。この点は、経験を積み重ねることでクリアにしていきましょう。

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