求人募集の「監査法人対応できれば尚可」とは?|経理実務いろいろ

現役会計士へのQ&A集
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求人で見かける「監査法人対応」とは、何なのか?

最近、当ブログでは「経理実務の種類」や「未経験から経理の目指すには?」みたいな記事を書きました。意外にも?読んでもらっていて驚いています。特に、「未経験から経理」の話は、関心が高い模様。

さて、そんな中、今回は求人等でたまに見かける「監査対応可能な方」という条件。一見、「なんか大変そう」「すごく知識が問われそう」等、ありますが、実際のところをご紹介しようかと思います。実務をされていなければなかなかイメージできないところですが、せっかくの機会なので是非、ご覧ください。


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「監査法人対応」は「監査人のお相手」をすること

端的に言うなら、「監査法人のお相手」ということです。それでは、具体的にどのような相手をするか、下記にご紹介します。

PBCリスト対応(難易度:易)

PBCリストとは、prepared by clientのリスト、つまり監査法人が企業に依頼する監査必要資料のリストです。なので、PBCリスト対応は、監査資料の準備ですね。依頼内容は、大きく2つに分かれます。「定例依頼の資料」と、「それ以外」。定例依頼の資料は、前回準備した内容に準じて用意すれば対応可能なの、それほど難しくないでしょう。

一方で「それ以外」が問題です。少なくとも監査法人側がこれまでと異なる点を見ようとしているので、資料の提出方法を考える必要があります。また、シンプルな依頼(特定取引の契約書等)なら難しくありませんが、企業側でそのまま提出できる資料がない場合(一定期間で特定条件に該当する取引額の集計等)、一定の集計・加工が必要なケースも少なくありません。マンニングを取られるという点でも企業側からすると厄介です。その意味で、監査法人の意図を理解し、提出データのイメージをしながら作業対応可能な人材が欲しいというのが採用側の本音でしょう。

質問対応(難易度:易~難)

前述のPBCリスト提出内容についての更問もあれば、インチャージ等が最初に行う決算データ全体分析で、違和感のある項目等について行われる質問もあるでしょう。企業規模にもよりますが、経理メンバーが少ない場合は、経理部の部長が全て対応ということもあります。ただ、ある程度の規模になるとやってられないので、各担当者が個別に監査法人の担当者と対応を行うのが通常です。

この質問対応がなかなか難しかったりします。国税の調査でもあるあるですが、「聞かれたことのみ正確に答える」というのが大事です。つまり、
・聞かれてもない周辺の話も勝手に話さない
・知らないことを適当に答えない
・間違い、嘘を伝えない

ということ。

物腰の柔らかい担当だったりすると、つい、周辺の話をしそうになりますが、ちょっとした違和感に食いつく監査人もいます。すると、別の資料、別の質問・・・とエンドレスになることも。非協力的になれということではなく、必要なことを必要なだけ伝えることも大事です。ただ、このあたりはさじ加減一つなので、まさに経験がものを言う感じでしょうか。

また、2点目、3点目は極めて重要です。通常業務に加え、監査対応をしていると本当に大変で、さっさと監査対応を終わらしたい気持ちに駆られます。しかし、そこで、いい加減な回答をしてしまうと、その場は終わっても、後で大問題になることも。内容によっては、監査人側が監査手続きを増やすことがあったり、問題によっては、より上席者とのミーティングを要請されたり。結果として、余計な時間がかかることになりかねません。知らない、わからないことは持ち帰る、これが基本です。

論点折衝(難易度:難)

大企業あるあるです。監査法人から指摘を受けた時や、新たな取引が発生した場合の会計処理検討時に起こります。企業側が監査法人の言うことについて「Yes」の方針(言うがまま)なら考える必要はありません。開示なんかは、定型の話も多いので、基本、言うがままになりがちですが。

ただ、そうした論点、そうした企業ばかりではありません。企業も会計基準を正確に解釈し、実取引に照らし妥当な会計処理を実施しています。その処理について、監査人から異論があれば、当然、戦いになるわけです。そもそも会計基準では、個別具体的取引について、その会計処理を1~10まで教えてくれませんから。解釈の幅があることで、企業・監査人のいずれかが間違っていると明確ではない=争いになります。

このケースが一番、経験が問われるところです。自身の会計基準の知識はもちろんですが、企業の取引形態、他者事例、過去の処理事例等、知識・経験と、それを監査人へ明確に伝えるコミュニケーション力が求められます。逆に、この経験をしている人材は、企業側では非常に助かる人材となるわけです。

なお、一番、スキルが求められるため、論点次第でこうした対応は別担当、上席者が行うことも。これはケースバイケースでしょう。

監査法人対応って何だ? まとめ

“監査法人対応とは?”
・監査人の対応をすること
・監査資料準備、質問対応がメイン
・企業と監査法人で見解が分かれた場合の折衝も
・知らないことは持ち帰ることが基本

いかがだったでしょうか。「監査法人対応」と聞くと、とにかく「大変そう」というイメージを持ちますが、慣れれば大したことありません。ただ、「慣れる」までが大変なんですが。あと、前述のとおり、どんなに定例業務で多忙だったとしても、「いい加減な対応」は避けましょう(監査対応に限らずですが)。まずはその心がけから。

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