実際に監査現場で感じた小話
長きにわたる会計士試験勉強を経て合格し、晴れて会計士試験合格者となり、監査法人へ入社。ここから「先生」と呼ばれる会計人としてキャリアがスタートします。
さぁ、がんばるぞ!
そういう思いの人も多いでしょう。しかし、監査チームへアサインされ、クライアントへの往査が始まると、いろいろと大変なことが待ち受けています。その中には、理不尽なことも多々ありますが、それも「先生」と呼ばれる職業の難しさでしょう。
そういうわけで、今回は監査法人で働き始めた時のイメージを持ってもらうために、監査現場のリアルな出来事を気ままにご紹介したいと思います(なお、実際の監査の仕事内容や監査の一日みたいな話は別の記事で。今回はもう少し泥臭い?話です)。
勉強の合間、束の間の休息にゆっくりご覧ください。
Twitter質問大歓迎!
他のブログは↓から
にほん ブログ村
監査のやりやすさ、やりにくさ
当然ですが、監査先は様々です。そして、その企業、及び企業を取り巻く環境にによって行うべき監査手続きは変わってきます。結局は、「監査リスク」に応じた手続きになります。そう考えると、監査リスクが高い=監査やりにくい?などイメージしそうですが、そんなことはありません。
もちろん、監査リスクが高い企業について、どのような手続きを実施すべきか、という点ではやりにくさ(≒難しさ)はあるでしょう。ただ、クライアント側としっかり協力関係が築けていれば、監査の遂行において障害になることはあまりありません。
むしろ監査のやりやすさ、やりにくさという視点では、意識すべきは「関係性」です。もちろん、慣れ合う必要はありませんが、こちらの依頼する資料について、期日を守らない、漏れがある、提出しない等、の対応をする企業は残念ながら存在しています。
ここで、監査側が「こっちは会計士だぞ」みたいな姿勢は間違っても取ってはいけません。もちろん、こびへつらう必要もなく、毅然とした態度は必要ですが、企業側にも言い分があります。
法律で決められているから監査を受けているが、資料提出、用意の対応をするカウンターパートの経理担当者は、監査対応以外の本業があります。しかも企業規模が小さい場合は、一人で何役(経理、財務、総務、人事等)も業務を担当していることでしょう。そのような中で、毎度毎度、オントップで業務が増える監査対応は、煙たがられることが多々あります。
そのため、しっかりとした「関係性」=「協力関係」を築くことは極めて重要です。もちろん、「監査の必要性」「結局は会社にとってプラスになる」等の正論をぶつけることもありますが、ぶっちゃけ、経理のカウンターパートの担当者にとってそんなことどうでもよくて、目の前の仕事をこなすしかない、というケースも少なくないんですよね。
それ故に、監査のやりやすさにつなげるために、
・「監査だから」「会計士だから」という姿勢を全面に出すな
・「企業側の担当者視点」を持つ
・「時間をかけて丁寧に」関係性を築く
という点は、是非、これから監査現場に行く際に意識してもらえればと思います。
企業によっては、一度関係性をこじらせると、修復不能ということもゼロではありません。また、協力関係が築ければ、こちらからも聞きやすい一方で、相手側からも事前に情報共有してもらえたりしますからね。結論、会計士は「思いやり」と「コミュニケーション力」が大事!
クライアントと「ピリピリ」する場面
監査先の規模は大小様々ですが、比較的大規模な企業(経理が数十名いる)ケースでありがちです。このようなケースでは、監査先の経理部や主計部といったところに「会計士」「税理士」がいることが少なくありません。企業内会計士ですね(企業内会計士については、他の記事「会計士のキャリアパターン」としてもご紹介しています。気になる方はこちら)
このように企業内会計士がいる監査先は、相手が会計士のため、こちらの意図をすぐに理解し、必要なデータ、資料を提供してくれたり、説明を求めた際も非常にスムーズに物事が進むことが多いです。ただ、逆もあります。それは、監査法人と企業側の経理処理等について見解が分かれた場合です。
当然、基準で明文化されており、処理が明確なものは論点にならないのですが、実務では「基準で明確ではないグレーゾーンの取引」が多々あります。こうした取引について、監査法人は四角四面の会計処理を「是」とする傾向がありますが、企業側は社内事情等で少しトリッキーな処理を選ぶこともあります(例えば、本来Aの処理をすべきだが、実現する場合システム対応や稼働が大幅に増加するため、Bの処理でいきたい等)。
監査する側は、あるべき処理を基本は求めるため、衝突するケースです。もちろん、企業によっては、「わかりました、何とか対応します」で終わるケースもありますが、企業内会計士等がいると、あの手この手で企業側主張の処理でもOKでしょ?という説明してきます。
基準の本文はもちろん、その結論の背景や、本公開前の公開草案、意見募集の内容等、全てに目を通し、自身の処理を「是」とする材料を集めてくるわけです(企業内会計士も、もともと監査法人でやってきたことなので、お手の物です)。こうした企業側の意見に対し、監査側がどのように返すか・・・何となくピリピリする感じが伝わるでしょうか。
一般的には、「会計士」=「会計の専門家」のイメージでしょう。ただ、企業側に企業内会計士がいる場合、通常はBig4でシニア、インチャージを数社経験した者です。下手をすると監査している側のインチャージやEMと同期なんてことも(場合によっては自分より経験のある会計士というケースも)。それは、やりづらくなりますよね。
そのため、実務では「基準本文(原典)」を本当に見ることが増えます。その上で、「基準でこうなっているので」みたいな話だけで進む現場ばかりではありません。合格してからもひたすら勉強が必要・・・というわけです。
ちなみに、私も監査法人側で監査をしている時は、「なぜ、企業はここまでこの処理にこだわるのかな・・・」みたいなことを思うことがありました。しかし、実際、自分が企業側になると監査法人と見解が相違することは多々あり、徹底的にやりあうことも増えました(特に、IFRS導入の際はIFRS15について相当やりあった記憶があります。しかも、たまに監査法人側が間違ったことを主張しているケースもあったり)。企業には企業の事情があるものです。
補足.こんな企業もあります話(入館証差別?)
双方意見はありますが、私が昔、往査したクライアントの話です。企業に往査する際、「入館証」が必要になるケースがあります。最近はセキュリティチェックも厳しいですからね。そのため、新たに監査チームにアサインされ、メインのメンバーになると、「入館証」を発行してもらうケースがあります。
ただ、企業によっては、「公認会計士のみICチップ入りの入館証を発行する」ところがあります。つまり、「会計士補」「会計士試験合格者」は、「ただの紙っぺら入館証」というわけです。これが本当に困ります。ちょっと休憩、コンビニに行くときも、いちいち受付で開けてもらう、もしくは入館証を持っている公認会計士と一緒に行動しなければなりません。「なんだよ、その差別・・・」と心の中で思ったものです。
ちなみに、企業側の意見もあります。セキュリティ上の問題で、ICチップ入り入館証を乱発する訳にもいかないというわけですね。紛失する可能性も高まるので。それは一理あるのですが・・・。
「早く公認会計士になってやるぜ」
心に誓ったものです。
補足.こんな企業もあります話(呼称差別)
始めてアサインされ、監査の現場に行くとクライアント担当者から「xx先生」と呼ばれた時は、試験に合格したんだな・・・と思ったものです。ちなみに、私見ですが、中小規模の企業では、比較的フランク(xxさん)のような呼び方が多い印象です。一方で、旧国有企業みたいな大企業になると、「xx先生」と必ず呼ぶみたいな雰囲気。
ただ、この呼び方でも差別があったりします。「会計士補」「会計士試験合格者」は「xxさん」と呼び、「公認会計士」になった者に対してのみ「xx先生」と呼ぶ、みたいな。嘘のような本当の話です。こちらからするとしょうもない区分けなんですが、そういうところにこだわっている企業もありました。何となくモヤっとしたのをよく覚えています。
ちなみに、前述の入館証の話ともつながりますが、修了考査の情報とかもこういう企業は知っていて、
合格発表が近づくと「ICチップ入館証の手続きもあるので、試験結果は教えてくださいね」みたいなことを言う人も。どうせでもプレッシャーのかかる修了考査でこれ以上ストレスを増やしてくれるなと。
ちなみに、かなり昔は、監査法人内でも他の人を呼ぶ時に「xx先生」と言っていたことも。今はなくなっています、多分。
監査現場のリアル小話 まとめ
いかがだったでしょうか。個人的には、以下の点、頭の片隅に留めておいていただければな、と思います。
✓ 監査先には自分より「会計知識」「監査知識」を持つ者も
✓ 早く修了考査を突破しよう
今日はここまで。勉強に戻りましょう!
コメント