日商簿記2級の合格率推移から難易度を徹底分析|過去23回分の推移

合格率推移分析
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日商簿記2級の『難易度』『ネット試験』『就職転職での評価』

新卒で就職する際や、転職する時、また事務職に従事したい場合等、どのような資格があれば有利か、よく質問があります。これについて、費用と難易度を比較考慮すると、個人的には『日商簿記2級』はかなりオススメです。

ネットで調べると、人によっては「日商簿記2級は誰でも取れるから意味がない」と言われることもあります。しかし、今回お示しする第138回から第161回までの合格率推移や、現在の日商簿記2級の範囲を理解すると、決して「誰でも取れる」資格ではないことがわかるはずです。

また、2020年12月からは日商簿記3級、2級については「ネット試験」が開始されています。難易度は統一試験(いわゆる従来の試験)と難易度は同一とのことですが、本当のところはどうなのか、こちらも合格率の推移から分析したいと思います。なお、統一試験は2023年度から廃止されネット試験のみとなります(日商簿記3級と2級。1級は従前どおり統一試験のみ)。

それでは、日商簿記2級について、①試験範囲の理解、②合格率推移から難易度の分析(統一試験、ネット試験)、③就職・転職における評価、の3点についてご紹介します。学習時間が300時間~500時間とも言われる日商簿記2級、実際のところはどうなのか?是非、最後までご覧ください。

使える『日商簿記2級』の試験範囲

日商簿記2級とは、そもそもどのような試験なのか、まずはその概要をご紹介します。

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引用元:商工会議所の検定試験-2級

上記は商工会議所の検定試験公式HPからの引用です。日商簿記を受験したことがない方はイメージがつかないかもしれませんが、簿記の入門3級に比べると、圧倒的に範囲が広く難易度が上がっています(括弧書きの原価計算を含むというのもいやらしい範囲)。

そして何より、昨今の範囲改定で日商簿記2級に「連結会計」が含まれることになったのも難易度上げている一因(以前は1級の範囲)でしょう。

10年以上前に合格した人は、今の日商簿記2級の問題を見ると崩れ落ちる、そういうレベルになっています。これだけ見ると、「思ったより大変そうだな」とイメージしてもらえるかと思います。実際、日商簿記2級は、企業を取り巻く利害関係者への報告や企業内部での経営管理に役立つ知識の習得が目的になっています。それゆえに内容もより実践的なものになっていると言えそうです。

ただし、そうはいっても試験範囲を定めた合格基準のある検定試験です。しっかり学習をすれば合格できる試験と言えます。それは、「絶対評価」で合否が決まっているからです(相対評価で合格率がコントロールされていると推測される日商簿記1級とは異なる)。

そのあたりは、合格率推移とともに後述します。

↓日商簿記1級の難易度、合格率推移が気になる方はこちらの記事

日商簿記2級の合格率推移から難易度を知る

日商簿記2級の難易度、すごさを知る上で、合格率の推移は有用です。ここでは、近年難化していると言われる「日商簿記2級」の本当の難易度を合格率推移から見るとともに、「絶対評価」(合格者調整なし、合格点を取れば合格)を裏付ける情報が得られるのかをお伝えしたいと思います。

なお、データは第138回(2014年11月)~直近の第161回(2022年6月)までの過去23回分の推移となります。

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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ 作成:CPA-MAP

日商簿記2級は『絶対評価』

いかがでしょうか。一言で表現するなら、「乱高下しすぎ」と。直近過去、23回で最も合格率が高かった146回(47.5%)と最も低かった157回(8.6%)では、その差が約39%。ここまで合格率が乱高下する試験はなかなかないですね。

さて、ここから何がわかるかですが、日商簿記2級は『絶対評価』であることです。日商簿記はいずれの試験も合格基準70%以上と決められています(1級は足きりがありますが)。しかし、配点を調整することで70%の基準に達した人数を調整(=合格者数を調整)することも可能です(=相対評価)。ただ、この合格率の推移、変動の幅を見ると少なくとも合格率調整はしていない=絶対評価と言えそうです。

絶対評価だったらどうなのか?

一言で言うと、「試験の結果が他者に依存するか否か」です。合格率がとんでもなく低いタイミングもあり、出題による運不運はあるでしょうが、どんな問題であっても自身の結果のみで合否が決まるのが絶対評価です。

これが、相対評価で合格率調整をしているなら、普通の配点なら70%をクリアしていても、上位10%が合格するような配点にされて合格できないケース(つまり上位から10%を合格させるようなイメージ。他者に高得点者がいればそちらが合格してします)もありえます。その意味で、絶対評価である日商簿記2級は、「努力が報われる試験」と言えそうです。

続いて、具体的に合格率が目立つ回をピックアップしたいと思います。

日商簿記2級は難易度の高低差が大きい

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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ 作成:CPA-MAP

グラフはごちゃついていますが、分母が受験申込者である合格率黄色折れ線です(一般的に意識される「日商簿記2級合格率」)。また、実際に受験した者を分母とする合格率は水色折れ線になります。合わせてご覧ください。

では、次は具体的に合格率が目立つ回を見ていきましょう。今回取り上げた2014年から2022年の計23回分、全期間平均は、対受験者で22.2%(対申込者で20.9%となりますが、この合格率から大きく乖離する実施回について個別で触れたいと思います。

以下、合格率が極端に変動している実施回について、過去問や日本商工会議所発表の講評を参考に分析、検証していますが、個人的見解である点、ご留意ください。

第141回(11.8%)と第144回(13.4%)
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

まず、2015年11月実施の141回についてですが、こちらは、解いてみると難易度的にはそれほど難しくなさそうです。ただ、見慣れない問題や苦手意識を持っている人が多い論点が出題された印象かなと。

目についたのは、仕訳問題では馴染みが薄い「受取配当金の源泉所得税控除」や苦手意識を持つ人が多い「本社工場会計」、そして得意不得意が分かれやすい「CVP分析」あたりでしょうか。源泉所得税率の読み落としや、苦手だからとそもそも切っていた論点もあるかもしれません。問題自体は平易なので、この合格率からは「勉強していた人とそうではない人の差が浮き彫りになった」実施回と言えそうです。

続いて、2016年11月実施の144回です。こちらも第1問の仕訳問題がかなりクセが強かった印象です。また、第2問の商品売買は平易ではありますが分量が多く、はまってしまうと後続に影響が出てしまう内容でしょう。その他、精算表、費目別と総合原価計算の問題は基礎的な内容かと思います。

こう考えると、得点が取れる第3問、第4問、第5問を普通に解いていれば合格率はもっと高いはずですが、第1問の見慣れないソフトウェア関連仕訳や、第2問の分量と正確性が求められる商品売買問題ではまった人が多かったと想定されます。つまり、よく試験で言われる「問題の見極め」が求められた実施回と言えそうです。

しかし、個人的には、「問題の見極め」が必要なのは、日商簿記1級や税理士、会計士試験レベルの話かなと。日商簿記2級は、基本、満点を狙いに行く試験だと思うので、その点で、この144回で合格できなかったのであれば、改めて基礎から勉強する必要があるのでは?と感じました(以下、合格率が低い回は同様)。

146回(47.5%)
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

2017年6月実施の146回です。ここ数年で断トツで合格率が高く、50%に迫る実施回です。

内容は、仕訳問題から始まり、銀行勘定調整表、精算表に標準原価計算、最後は単純総合原価計算という出題構成です。クセの強い問題がよく見られる第1問仕訳問題ですが、この回は「出題区分表」の改訂をふまえ出題された模様。ただ、内容はかなり平易であり、商工会議所の講評においても満点答案が極めて多かったとか。しっかり勉強していれば着実に得点できたようです。

その他、銀行勘定調整表も苦手意識の人が多い印象ですが、調整事項は基本的なものばかりなのでうっかりミスさえなければ高得点が狙えそうです。その他は、精算表が時間を取られそうですが、中身は基本的内容ばかりで十分完答可能でしょうし、標準原価計算も単純総合原価計算もサプライズなしの出題です。この回はまさに、「しっかり勉強していれば合格できた」実施回と言えそうです。

151回(12.7%)、157回(8.6%)
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

ではまず、合格率が再び低下し難化した2019年2月実施の151回です。

こちらは、仕訳問題で支店開設時の仕訳が問われたり、株主資本等変動計算書の出題があったりと見慣れない論点がやたら目につきます。

ただ、それより何より、注目すべきは第3問の連結精算表です。日本商工会議所の講評でもありますが、子会社が1社というケースは実務ではなく、複数子会社を有するのが通常なので、2級レベルの連結会計問題として出題とあります。

ぱっと見で、時間かかるとわかりますね。受験者の方は他の問題から着手し、最後、この問題で取れるところを拾う戦略になるでしょう。会計士受験者から見れば「ボリューム少し多めだな」というくらいかもしれませんが、日商簿記、しかも2級の出題で時間が限られているとすれば、相当ハードルが高いと感じました。

その他、第4問は部門別計算(補助部門→製造部門→製品への補助部門費配賦関連)、第5問は等級別総合原価計算です。ぱっと見ですが、いずれも解き易い印象です、特に前半パートに比べると。こうして出題全体を見ると、「問題の見極め」「余った時間でどこまで連結精算表を取れるか」にかかっているかと思いますが、とにかく「時間が足りない」実施回だったと言えそうです。また、日本商工会議所の「日商簿記2級は連結ががっつり範囲ですよ!」という主張を感じた回でもあります。

続いて、過去23回で最低の合格率(8.6%という一桁)を記録した2021年2月実施の157回です。

まず、仕訳問題ですが、手形の更改や修繕取引等、伝統論点出題です。これは完答した人も多そうです。そして鬼門は第2問のリース。これはぱっとみで量がとにかく多いとわかります。正直、後回し・取れるところを最後に着手という問題でしょう。ちなみに、講評では、リースの実務を意識した問題であるとのこと。加えて、受験指導校のWeb解説も視聴したことに触れ、リース取引を出題予想から外していた専門学校があったに苦言を呈し、一定期間の取引を通して仕訳する指導の必要性に言及しています(若干の苦言でしょうか)。なお、得点率は3割程度だったようです。

その他、第3問は製造業の決算処理(出題区分表に入ってから初出題)では、初見の問題でどれだけ既存の知識を組み合わせて対応できるかが評価され、第4問の費目別計算、第5問の標準原価計算は基本的知識を問うものでした。

全体として、合格するためには取れるところを効率的に取らなければ合格できない回ですが、その取れるところが意外に限られている気がします。また、受験指導校の予想を外す?出題もあり、「専門学校への挑戦状」の実施回と言えそうです。それにしても、合格率が低すぎる。

160回(17.5%)
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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

最後は、直近で合格率が低い2022年2月実施の160回です。とはいえ、17.5%は前述までに取り上げた難易度に比べるとまだましというところでしょうか。なお、試験内容、講評については22年8月時点で非公表です。これは、ネット試験が開始されたことに起因しますが、同種の出題がされるため受験した方による試験問題、試験内容の公表が禁止されているためです(21年3月に商工会議所HP 【重要】新たな日商簿記検定の受験に関してのお願いより)。

勉強している人なら直近内容が気になるのは当然ですが、この点は、実際の受験者からの情報とともに、やはり専門学校の情報をフル活用し試験の準備をする必要があるでしょう。

日商簿記2級はネット試験の方が合格率が高い!

さて、日商簿記2級の合格率推移とその難易度についてご紹介しましたが、合わせて2020年12月から開始されたネット試験の合格率についても見てみます。

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数値引用元:商工会議所の検定試験-受験者データ グラフ化:CPA-MAP

日商簿記2級が絶対評価である点(どんなに難しくとも、どんなに簡単でも合格基準を満たせば全員合格)をふまえると、とにかく合格したいなら、統一試験(ペーパー試験)よりネット試験を受験すべきでしょう。

過去23回分の統一試験合格率平均は22.2%ですが、ネット試験での合格率は15%~24%も高い結果です(試験問題が禁止されていてもSNS等で情報が流れている?とすら疑ってしまう合格率の差)。もちろん、受験のしやすさ、試験の緊張感等も異なることも一因でしょう。

いずれにしても、明らかにネット受験の方が合格率が高いのは事実です。しかも、2023年度から統一試験は廃止のようなので、日商簿記3級、2級についてはネット受験が当たり前と考えるべきでしょう。

日商簿記2級の「就職・転職」における評価

個人的見解になりますが、取得していれば当然、評価になります。特に、経理含む事務職系では、評価されることでしょう。実際、就職・転職サイトでも、募集要件に「日商簿記2級」を掲げているケースは多々あります。事務の仕事がしたいという方は、「日商簿記2級」をとって損はないと考えます。

ただ、注意したいのは、「日商簿記2級」≠「経理への転職が容易」という点です。ここは悩ましいところですが、よく耳にする「実務経験」です。これは事実で、特に企業が経理要因で採用する場合、「日商簿記資格」<「経理実務経験」の評価になるケースもゼロではありません。年齢が高くなるほど、実務経験が重視される傾向に感じます。実際、どの資格もそうですが、資格勉強と実務は異なります。また、企業は経理要因が欲しいが、本業ではない経理事務の教育に時間を割きたくないというのが本音でしょう。

以上から、日商簿記2級の資格は、
・新卒→努力が認められ評価
・若くして経理事務職転職→しっかり評価
・年齢を重ねてから→資格<実務経験

のようなイメージかと思います。もちろん、年齢を重ねてからの転職も可能なのでその点は誤解ないように。

日商簿記2級の『難易度』『ネット試験』『就職転職での評価』 まとめ

最後にまとめです。日商簿記2級、特に統一試験(ペーパー試験)では近年難化傾向が続いており、難しい試験になっています。しかし、絶対評価の傾向は見られるので、しっかり勉強すれば報われる試験ともいえそうです。

また、今後主流になる「ネット試験」の合格率の高さもご紹介しました。どうしても合格ということであれば、「ネット試験」一択になるでしょう(今後、ネット試験のみになりますが)。就職、転職においてもしっかり評価される資格だと思います。是非、自信を持って挑戦してみてください。

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