会計士短答式試験はマーク式だから半年で合格!?
会計士短答式試験について、どの程度の勉強期間が必要か、気になりますね。少し検索すると出てくるのは、『会計士短答式試験に半年で合格』といった記事です。実際に合格した方が紹介されていれば、不可能ではないのでしょう。
こういう記事を見ると、『やはりマーク式だから短期であってもまぐれでも合格可能性がある!』と思いがちです。場合によっては、本当に半年等の期間で受験してしまう方(経験のためのお試し受験は除く)もいるでしょう。
今回は、そういう方たちへの警鐘を鳴らす意味での記事です。
私は短答から論文、その後の修了考査まで無事、全て一発合格を果たすことができました。その中で一番怖かった試験を聞かれれば、『会計士短答式試験』と即答します。
今回は、『会計士短答式試験』は、マーク式だからといって、短期間やまぐれで合格できる試験ではないこと、そして、むしろ逆でとてつもなく恐ろしい試験であることを知ってもらうとともに、それらの情報に踊らされることなく自身の勉強計画に沿って合格を目指すきっかけにしてもらえればと思います。
まずは、会計士短答式試験の特徴を知る
では、まず最初に念のため公認会計士試験の構成をおさらいします。
基本的な流れとして、短答式試験の合格者を対象に論文式試験を実施し、合格すると『公認会計士試験合格者』となります。その後、実務経験や補習所の修了、修了考査合格によって、『公認会計士』になります。
一般的に会計士試験と言われているのは、短答式試験+論文式試験でしょう。
さて、前述のとおり、実施される試験形式は、『短答式』と『論文式』の2種類あります。本来は、論文式試験の方が受験者の実力を確かめるには適しているはずですが、受験者数が多すぎるため、採点が間に合わない等の問題があります。そのため、まずは短答式試験(マーク式のため採点が容易)で受験者数を絞り、最低限の知識を有している者を対象に論文式試験(筆記試験)を実施するという2本立てとなっているわけですね。
ちなみに、税理士試験は、マーク式試験はなく全て記述です。気象予報士試験は、マークシート式と記述式の混合形式で、社会保険労務士試験は、マークシート式のみの実施ですね。
『短答式試験』と『論文式試験』はどちらを受験したいか?
さて、話を戻します。会計士試験の場合、『短答式試験』と『論文式試験』があります。この2つの試験、以下の特徴があります。
✓ 『短答式試験』はマーク式のため、運の要素が強い
✓ 『論文式試験』は筆記式のため、実力勝負
少し考えればわかりますね。当然、短答式の場合は、マーク式のため、答えはあらかじめ用意された選択肢から選ぶことになります。そのため、最初から回答の幅が限定されているわけです。雑な言い方をすれば、当てずっぽうでも正解しそうです。
こう考えると、『短答式試験は受験しやすい、半年合格も可能』と言えそうです。
では、ここで質問です。
『短答式』と『論文式』どちらで受験したいですか?
そりゃ、選択肢から選べる『短答式』でしょう!
そう思った方、慌てて飛び乗った電車が目的地とは逆方向・・・というくらい残念です。ただ、普通であれば、『短答式試験』というのもわかります。しかし考えてみてください。重要な事実を見落としていませんか?
それは運の要素があるということは、その分、逆に実力が反映されないおそれがあるということを。
択一式/マーク式試験だからこそ「実力を証明しにくい」
『短答式試験』の方が挑戦しやすい、合格しやすいと思うのは安易な考えです。次の例を考えてみてください。
①Aさんは、その問題について全くわからない
②Bさんは、その問題について少しだけ知っている
③Cさんは、その問題について9割は知っている
③Cさんは、その問題について完璧に知っている
さて、結果はどうなるでしょうか。
①Aの人は、どの選択肢も消去することができないため、完全な運に頼り・・・間違えます。
②Bの人は、少しは選択肢を絞れるでしょうが、結局、最後の2つくらいでどちらか絞り切れず運に頼り・・・間違えます。
③Cの人は、最後の選択肢2つまで絞れるでしょうが、その2択で運に頼り・・・間違えます。
④Dの人は、選択肢を正確に絞り、正解の肢を選びます。
こう考えると、4人とも知識量に違いはあったはずですが、選んだ肢が間違ってしまえば、目に見える結果としては、Aさん、Bさん、Cさんは同じ不正解、Dさんのみ正解と評価されます。もちろん、AさんとCさんでは解答にたどり着く可能性は違います。しかし、どちらであっても選択した答えが違っていれば、評価する側はDさん以外、全員間違いと評価するだけです。
本来は、不正解であったAさん、Bさん、Cさんとの間にも明確な差があるはずです。これが論文式試験なら、①Aの人は0点、②Bの人は40点、③Cの人は90点・・・といった具合に、より正確に受験者の知識レベルを測定することができます。
勉強の努力、知識の量だけ、それを答案に表現する機会が与えられ、また、その結果が反映される、それが論文式試験であり、短答式試験との決定的な違いというわけです。
改めて『短答式試験』と『論文式試験』どちらを受験したいか
あなたが会計士試験の勉強を何百、何千時間も本当に努力をしてきたなら、短答式試験と論文式試験、どちらを受験したいでしょうか?
答えはわかりますね。
繰り返しですが、一見、短答式試験は、択一式/マーク式だから挑戦しやすそう、運次第では合格できるかも・・・と思いがちです。しかし、それは勉強していない、合格圏内に達していない人の発想です。
ある程度勉強をした人は、『短答式試験』では、『自分の実力が選択肢でしか表現できない、評価されない』怖さを知るはずです。最後の2つまで選択肢を絞っても正解できなければ、勉強していない人と評価は同じという怖さがわかるはずです。
それ故に、『短答式試験』においては、肢を100%の理由で切れる理解、実力が必要であり、そのための勉強法が必要になります。もちろん計算科目、計算問題の場合は、算出が正しいかにかかっていますが、理論科目については、なおさら肢を100%の理由で切ることが必要になるわけです。
肢を100%の理由で切るためには、本当に深く、正確な理解が要求され、しっかりとした基礎知識が必要になります。丸暗記では当然、対応できません。そう考えると『半年』という勉強時間の設定は、個人的にはおすすめできないと思っています。
合格するなら早い方がいいのでは?
でも、合格するなら早い方がいいよね?
そのとおりです。それなら、「短答式試験に半年で合格」というのは、非常に優れているように見えます。ただ、考えてみてください。あなたの目標は「短答式試験に合格」することなのか「論文式試験に合格」することなのか。
もちろん、短答式試験を早期にクリアできれば、論文式試験のみ集中することができるのは事実です。しかし、「短答式」とか「論文式」は、試験形式の違いだけと考えることもできます。
学ぶべき内容=試験で評価、問われる内容はそれほど相違しないということです(要は問われ方が違うだけ)。
そのため、短答式試験の知識は論文式試験合格のための知識でもあることは言うまでもありません。短答式試験に早期にクリアしたとしても、最終的に学ぶ範囲は同じになります。さらに言うと、短答式試験に半年で合格するため、大事な基礎内容を不十分なまま進み、短答式試験出題可能性が高い論点を集中的にこなすようなイレギュラーな学習スケジュールを行うと、その後の論文式試験の学習にすら悪影響を及ぼすと考えます。
以上から、最終目標を「論文式試験合格」にするなら、そのための勉強計画、習熟スピードをしっかり維持し、目先の誘惑にとらわれないこと、それが結局は早期の「論文式試験合格」につながると思います。
会計士短答式試験は半年なんかじゃ合格できない まとめ
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実際、合格できた人もいるようなので、『会計士短答式試験に半年合格を目指す』こと自体は否定はしませんし、他の人が実践し、合格できるなら、それは素晴らしいことでしょう。
ただ、私の考える会計士試験の短期一発合格勉強法の視点では、おすすめできません。そもそも最終目標は『短答式試験』合格ではないでしょうし、論文式試験をどの程度の期間で合格できるかを考えるなら、目先の短答式のみの短期合格に心揺らぐことなく、自分が想定する勉強計画をしっかり守り、学習を進めることが一番だと思います。
何よりも、『短答式試験』の場合は、『中途半端』な勉強量が一番痛い目をみます。
中途半端な勉強は、全く勉強をしていない人と評価が同じ(=まったくの無駄)になりかねない試験だと肝に銘じ、だからこそ、しっかり時間をかけて短答式試験合格を目指しましょう。
一見、『まぐれもあるから短答式/マーク式は挑戦しやすい』と考えがちですが、0か100かで評価、採点されるこの形式は、場合によっては、勉強努力が0から99までの人は同じ評価になりかねないハイリスクな試験。本当に怖い試験です。
そのため、『論文式試験』以上の対策、理解、勉強法が必要だということも合わせて認識いただければと思います。
じゃ、その肝心の勉強法は?
それでは、『会計士短答式試験』の必殺勉強法、続けてこちらでご覧ください。
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