リファードJOBって何だ?|監査法人で当たり前のように使われる用語

監査&経理実務の知る
この記事は約10分で読めます。
スポンサーリンク

会計士試験では学ばない用語だらけ

あ、ジュラルミン予約やってない

今から間に合うんだっけ?

ま、うちのチームは小さいから最悪タクシーで運ぶか

スタッフ一人だときついね・・・

みたいな会話が監査法人で勤務すると交わされます。ま、ジュラルミン予約は一昔前の話かもしれませんが。

働き始めて初めて聞く用語はたくさんあります。その中には「???」となる用語も少なくありません。前回に引き続き、今回もそんな「監査法人で使われる用語」についてご紹介したいと思います(前回の記事「インチャージって何?」はこちらから)。

なお、私が所属していたのはもう10年近く前なので、現在は既に使われていない言葉もあると思いますが、その点はご了承ください。ちなみに、所蔵の監査法人、所属事業部で使い方が違ったりするケースもありますが、ゆるりとご覧いただければと思います。

それでは早速、いってみましょう!

レビュー=調書レビュー

他の意味でも使われますが、監査現場では「調書レビュー」を意味することが多いでしょうか。監査水準を保つためには本来、このレビュー水準は均一化されているべきですが、実際のところは、レビュー者(インチャージやEM)によってレビューの厳しさが異なります。

ちなみに、昔は、調書を出すとインチャージがレビューを行い、「レビュー一覧表」みたいなファイルが送られてきて、そこには山ほどダメ出しが記載されていたものです。それを一つずつ、クリア(レビュークリア)するのが、日常茶飯事でした。

あと、今では考えられませんが、いけてない調書は目の前で破られることもありました。なんなんでしょうね。思い出すと怒りが再燃してきました・・・。

ちなみに、紙調書時代は、調書作成者やレビュー者が手書きのサインをしていました。入社し、初現場で調書作成すると「サインしといて」と言われ、慌てて自分のサインを考えたり。ただ、他の人と被るとだめなので、イニシャルをベースに少し変化させたサインを考えたものです(これも国際事業部の特色で、国内事業部は普通に漢字でサインする人が主)。

ジュラルミン予約=監査荷物を運ぶためのボックス予約

新人の重要な仕事の一つ、それが「ジュラルミン予約」です。

監査現場に向かう時、必ず必要になるのが「過年度調書」です。過去の監査でどのような手続きを行ったかを確認するのは必要ですからね。しかも、昔は全て「紙調書」です。四半期監査対象なら、その調書量は凄まじいものでした。そのため、監査法人では大量の「ジュラルミンケース」を保有しており、往査の時期には、調書を監査現場へ運ぶため、ケースを各チームのスタッフが予約・確保するわけです。このジュラルミンケース予約合戦に負けると悲惨です。調書を一度に運ぶことができないので、一つのジュラルミンで行ったり来たりするはめになります。

特に往査の時期が被る(3月決算が多いので)タイミングは、熾烈を極めていました。それだけに若手の重要な仕事は「ジュラルミンケース予約」でしたが、近年は電子調書になり、その役割も大幅に減少したかと思いますが。

ちなみに、現場の最終日なんかは、すぐに事務所で作業するためにタクシー何台かでジュラルミンをスタッフが持って帰ることもよくありました。まさに力仕事。電子調書が主流の近年では、過去の話ですね。

スタッフスペースとマネジャーブースとパートナー部屋

最近は一般事業会社でも多いですが、いわゆる「フリーアドレス」、座席が固定されていないケースが監査法人では多いでしょう。理由は、監査人は基本、往査している期間も多いので、全員のデスクを用意する必要がないからですね。

売上1兆円を超えるようなケースでは、30人以上の監査チームで常駐部屋がクライアントオフィスに用意されているケースも。こうなると、事務所にいる期間が年間の3分の1くらいなんてこともあります。結局はアサインされるチーム次第ですが。

一方でマネジャーあたりからは、個別のブースが確保されます。ブースといっても、ちょっとしたパーティションで区切ったスペースですが、それでも「自分だけの場所」が持てるのは、スタッフ、シニアとの明確な違いです。

そしてパートナー。ここからは個別部屋になります。ただ、場所の問題もあり、全員分の部屋がないことも。あと、どの部屋になるかもパートナー間での取り合いが。窓側の景色がいい部屋か、内側の籠った部屋か・・・パートナーの力関係が垣間見えたり。

ちなみに、嫌なシニア、マネジャーから離れたデスクでスタッフは仕事をする傾向があります(私見)。また、シニア、マネジャーに発見されないように、他のスタッフが多く座っているところに紛れて仕事をする傾向もあります(私見)。急ぎの時は電話で呼ばれるんですけどね。

パッケージ=連結の子会社等のF/Sデータ

連結決算を行う場合、親会社の決算はもちろんですが、子会社、関連会社のデータを集める必要があります。その収集する子会社や関連会社データをパッケージと呼びます。

連結が100社を超えるケース等は全ての会社をレビューする訳にいきませんが、重要な子会社については、親会社の監査人が子会社へ往査し、レビューを行います(=パッケージチェック)。ここで、子会社が上場していたり、会社法監査対象会社だった場合で、親会社の監査人=子会社の監査人だと、監査水準の平準化や、親会社視点での監査、子会社監査チームとの連携も図りやすいことから、効率的になります。

ちなみに、パッケージチェックは1日や2日程度の往査で行うことが多く、スケジュール的にはかなりタイトですが、連結視点の重要性判断なので、監査スコープとしては少し大きめになります(ただ、後日実施される子会社の監査では当然、子会社のスコープになるので、レビュー段階で子会社スコープで監査している方が後々楽ですが)。

昔はちょうどいい気分転換の出張にもなり、国内外問わず、個人的には好きでした(なお、場所による)。あと、勉強していた時は、サブ連とか、在外の複雑な連結とか、こんなんどこまでやるの?って思ってましたが、実務では机上より複雑な連結が山ほど出てきます。会社数も、サブ連+フラットの混在、ドル以外の通貨、決算期相違、GAAP差etc…。日々勉強。

リファードジョブ=海外本社への報告パッケージをチェック

少し細かい話です。前述のパッケージチェックのリンクしますが、海外で上場している会社が日本に子会社を有しているケース等が該当します。海外本社へ報告する日本法人のレポート適正性について、チェックする業務ですね。

海外の監査法人と連携するパターンですが、国際事業部ならではの業務でしょうか。当たり前のように「リファード」という言葉が使われますが、面食らわないようにしましょう。

ちなみに、リファードジョブの大変さは、英語等の外国語であるということに加え、GAAP差(基準差)の対応です。昨今はIFRSによりGAAP差が縮まっていますが、それでもまだ残存しています。また、親会社の国によっては、US-GAAP、IFRS以外のGAAPであるケースもゼロではありません。こうした中で作成されたレポートの妥当性を検証するのは、かなり骨が折れます(英語で、かつCFヘッジ等もバリバリ使っている企業の監査をした時は、吐きそうでしたが)。

なお、海外の会社の決算は基本12月決算なので、このパッケージチェックと他の日本企業監査(3月決算企業のQ3)が基本、バッティングします。しかも、作業を行う1月は営業日が少ないので、さらにタイトになります。もちろん業務の集中を避けるため、監査リスクに応じ監査手続きの平準化・前倒しをし、ロールフォワード等で担保するなんてこともやりますが、限界がありますからね。

つまり、国際事業部に所属したら、年始の長期休暇はあまり期待しない方がいいということです(国内事業部もQ3ありますが)。

開示チェック=四半期や有報のチェック

新人がアサインされる業務の一つ、それが「開示チェック」です。要は、四半期報告書や有価証券報告書といった外部への開示資料について、記載内容が漏れなく適正に作成されているかをチェックする作業です。いきなり新人にチェックしろと言われてもできるわけないんですが、そこは、監査法人に「開示チェックリスト」があります。

基本は、そのチェックリストにしたがって、項目の妥当性、網羅性等も確認する作業です。機械的にできる業務に一見思えますが、実は真面目にやるとかなり大変です。メインでそのクライアントにアサインされている者でも判断がすぐできない項目もあるのに、場合によっては、開示チェックだけそのクライアントにアサインされるケースもあります。その場合は、形式チェックはともかく、そのクライアント特有の事情に係わるものは、インチャージ等に確認しないとわからないケースも普通にあり、かなり大変な作業です。

なお、開示のチェックは、作成した企業の経理担当、監査法人、あと、プロネクサス社等の外部企業(開示専門の会社)へも通常、チェック依頼をしています。外部に公表されるものなので、何重にもチェックがかかっているわけですね。ただ、それでもミスがあり、しょうもない訂正報告が出されることもありますが。

ちなみに、絶対やってはいけないこと。それは、開示チェックで〇か×か判断できない時に、過去の開示チェックリストを見て、それと同じ判断をすることです。分からない時は聞く、確認する、とにかく過年度調書を信用するな!です。

パッケージチェックって何? まとめ

前回に引き続き、今回ご紹介した用語も会計士試験では出てこないものばかりでしょうか。ただ、監査法人へ入社すると知っていて当然(国際事業部ならというものも多くありますが)のように使われます。

せっかくなので、入社前のタイミングで少しくらい知っていてもいいのではないでしょうか。


   Twitter質問大歓迎!  

   他のブログは↓から  
にほん ブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました