難易度を合格までの年数のみで測るのは誤り
Q.税理士合格まで10年かかった人の話を聞きました。今更ながら、この試験はとんでもなく難しい試験でしょうか?
A.税理士試験は難しい。ただ、合格までの「年数」のみで難易度を評価することは誤り。
通常「会計士」関連の質問を取り上げることが多いんですが、今回は「税理士試験」についての話題です。その難易度については、言わずもがなで「難」であることは間違いないでしょう。ただ、合格までに「xx年かかる人が多い」ということが、その資格試験が「難しい」ということに必ずしもなりません。
そのあたり、今回はご紹介したいと思います。税理士にせよ、会計士にせよ、その他の資格にせよ、これから目指される方は、「難易度」を考える際の参考にしてみてください。
合格までの年数が長い≒難関試験
合格まで10年かかったら、難しい試験でしょ?
確かに、よく専門学校の資格紹介でも、評価されている「難易度」と「必要学習期間」は似たような傾向を示しています。つまり、難易度が難しくなるほど、学習期間も長くなると。
ただ、通常、専門学校の示す「必要学習期間」は試験範囲を学ぶために必要な期間(最低必要時間で示されるケースが多い印象/これあまり真に受けないように)であり、当然ですが、合格するまでの期間とは異なります。
じゃ、やっぱり学ぶ範囲が広い=学習期間が長い=難易度が高いってこと?
まさにここがポイント。「難易度」をどう考えるかでしょう。例えば以下のケースです。
①学習期間(学習範囲は広い)は長いけど合格率が高い試験
②学習期間は短い(学習範囲は狭い)けど合格率が低い試験
どちらが難易度が高いと思いますか?
おそらく②と答える方が多いでしょう。つまり、資格試験の難易度は通常「最終的に合格できる割合」で考えるべきです。そうすると、必ずしも学習期間が長い試験=難易度が高いとはならないわけです。
資格試験の「難易度」はどのように測るべきか?
賛否両論あると思いますが、個人的には下記の要素で総合的に判断すべきと考えます。
学習範囲、学習期間
前述でも触れましたが、学習範囲は広いほど学習期間は長くなるでしょうし、それだけ覚えるべき内容も増えるので、その点で難易度は高くなるでしょう。
ただし、この要素のみで判断するのは早計です。
合格率
当然、合格率「10%」と「70%」では、「10%」の方が難しいことはわかります。当たり前ですが、100人受験し、70人合格する試験と10人する合格する試験なら、どちらが難しいか?という話ですからね。
そう考えると、合格率の低さ=合格者の少なさであり、難易度を示していると言えそうです。
通常、この「合格率」が難易度を測る上で重要指標であり、この指標のみで十分なケースも多くあります。しかし、他資格・他試験と比較をする場合は、この要素のみの判断は非常に危険です。
そこでポイントになるのが「受験者層」です。
受験者層
例えば、公認会計士試験の論文式試験(合格率10%)と修了考査(合格率70%)では、どちらが難しいでしょうか。会計士試験や修了考査?を知らない人はピンとこないでしょうが、知っている人なら間違いなく「修了考査の方が難しい」と答えるでしょう。
理由は「受験者層」です。論文式試験は短答式試験合格者で争いますが、修了考査は、論文式試験合格者で争われます。つまり、修了考査の受験者は全員が合格率10%の論文式試験を突破しているわけです。どちらが競争が熾烈か、わかりますね。
また、「受験者層」について別の見方もあります。下記をご覧ください。
① とりあえず受けてみる人を多く含む試験の合格率10%
② 働きながら勉強する受験生が多い試験の合格率10%
③ 無職・専念者を多く含む試験の合格率10%
上記3つについて、いずれも合格率は同じ10%です。しかし、どれが一番、合格しやすいか?と問われれば、おそらく全員が①と答えるでしょう。なぜなら、とりあえず受けてみる人が多い中なら、自分がしっかり学習すれば合格が極めて高くなるためです(とりあえず受けてみる人=単に合格率の分母を増やしているだけ)。
一方で、③はどうでしょうか。無職・専念者=人生をかけて受験勉強をしている受験者です。おそらく、合格ライン上に大多数の人間があふれていることでしょう。その中の上位10%になることを考えると・・・合格することが難しいとわかります。
つまり、資格試験の難易度を見る上で絶対に外してはならない視点、それが「受験者層」というわけです。通常、相対評価になることが多い難関試験では、自分以外の受験者のレベル、働きながら勉強する受験生が多い場合と無職・専念者が多い場合では、「合格率」の持つ意味が異なることをしっかり理解することが大切です。
税理士は10年勉強しても合格できないくらい難しい?
それでは、最初の問いに対する答えです。
まず、税理士試験は、「難しい」試験であることは間違いありません(私自身は会計士試験の過程で受験、科目合格経験あり)。ただし、それは年数で評価するべきものではありません。
そもそも税理士試験は「科目合格制」であり「働きながら1科目ずつ」という挑戦が可能です。そのような事情から、そもそも合格までの勉強期間は長くなるものです。
もちろん、自身が無職・専念で挑戦できるなら、働きながら挑戦する人が多い中で優位性はあるでしょう。しかし、そうでなければ、どうしても一度に受験できる科目数が多くて2科目、通常1科目、試験は年に一度と考えれば、時間を要することがわかるでしょう。
税理士は10年勉強しても合格できないくらい難しいのか? まとめ
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✓ 難易度は、①学習範囲 ②学習期間 ③合格率 ④受験者層で決まる
✓ 特に見落としがちな「受験者層」は要注意
以上となります。税理士試験はとても難しい試験なのは言うまでもありません。しかし、受験者層を見た上で戦略を立てれば、また違った道筋が見えるのではないでしょうか。
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